STONE さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
自分を判ってくれる人
原作は未読。
主要キャラが5人と絞り込まれており、2クールと割と長尺。
更にSFやファンタジー的要素などの非現実的設定もなければ、主要キャラが同じ部活
だったり、共通の成し遂げるべきモチーフがあったりするわけでもない。
その分、持てる時間を恋愛を主軸としたキャラの心情表現に割いているため、各キャラが
かなり描き込まれているなと感じる作品。
先に書いたように共通の目標のようなものこそないものの、高校生活におけるイベントなどは
ほぼ1年掛けてじっくり描かれており、この辺も2クールの強みといった感じ。
そのせいか視聴している側もあたかも2年C組の一員として主要キャラを眺めているような
感じになる効果もあったみたい。
そういえば主要キャラのいずれも学園アニメの定番席ともいえる窓側後方にいなかったのが
新鮮だった。
キャラに関してはやはりメインヒロインである逢坂 大河がインパクトが強い。この作品が
元祖というわけではないが、この作品以降、幼児体型の暴力ツンデレキャラが増えた感がある。
ただ、キャラの基本設定はこのツンデレの大河を始め、体育会系脳天気少女の櫛枝 実乃梨、
腹黒美少女の川嶋 亜美など、ステレオタイプといった印象。
序盤は主人公である高須 竜児と大河がそれぞれ別の人を好きで、互いの恋愛を手助けする
ことで仲良くなっていくという、これまた一種の定型化されたパターンで始まる。
竜児が好きな実乃梨、大河が好きな北村 祐作だが、高スペックな要素こそあるものの、
いずれもお馬鹿キャラであるところが面白い。
キャラ、関係性のいずれもベタなところから始まり、このまま進めばそれなりに安定感のある
お気楽ラヴコメに終始しそうなところだが、途中から登場する亜美の存在により、変化を見せ
始める。
亜美の本質を突くような発言や行動は、自身も含めたキャラ同士の関係性に変化を見せつつ、
各キャラの心情も本音がにじみ出てくる。絵のタッチである程度は緩和しているが、この辺の
本音は結構ドロドロしたものがあり、作品のシリアス度は高まる。
こうなると序盤のキャラ設定や関係性がベタであったことが、逆に意外性を強めるものとして
効果的に生きてくる感じ。
この本音の部分、恋愛感情のみで突き進めばそれなりの結果は早急に得られたかも
しれないが、友情や相手を思いやることも考えてしまうと、そう素直に動けるものではなく、
そこに苦悩も生まれる。更に互いが互いを誤解することもあり、関係性がギクシャクしたり、
ぶつかることもある。
女子同士の殴り合いもあるが、他作品で見られるコメディ色の強いキャットファイトでは
なく、互いの本音をぶつけあったシリアス度の強いものであるため、かなり生々しさを感じる。
結局のところは各キャラが手探りで自身や相手を判ろうとして、一歩づつ大人になっていくと
いった感じだが、苦慮しつつも真剣に行動する様は最後まで飽きさせない。
特に恋愛に関して、他作品で見られる「友達を思って、自分は身を引く」という展開自体は
否定するべきものではないが、この作品での実乃梨が言うところの「自分の幸せは自分の手で
掴み取る」という、前向きな姿勢はかなり好みでした。
個人的に作品によってお気に入りのキャラなどがいたりするが、この作品に関しては5人の
キャラそれぞれがていねいに描かれていたためか、その不器用な生き方も含めて、いずれも
愛しかった。
恋愛感情という部分では、結果として大河、実乃梨、亜美のいずれも竜児のことを好きに
なっているが、これは竜児という人間が相手の本質的な部分を判っているという部分が大きい
みたい。いずれも自分の本質がなかなか回りには理解されないため、本当の自分を判ってくれる
人に惹かれるのだろう。
この辺も「本当の自分」というものを浮かび上がらせるためにも、表面上のベタな設定が
生きている感じ。
竜児が相手の本質を判ってあげられるという部分について、本人の元々の特性もあるのかも
しれないが、竜児自身が見た目の印象からかなり誤解される存在であったことが大きかった
ように思える。
作品中でそういった描写はなかったが、母子家庭で、母親は水商売、死んだ父親(実際は
違ったが)はヤクザという家庭環境も、回りからは偏見で見られることも多かったのではない
かな。
恋愛感情というものは色々あるはずで、傍にいたり、相手のことを考えるとボーッとしまう
とか、絶えず相手のことを考えてしまうとか、常に一緒にいたいと思うとか、もっと
ストレートに触れたい、キスしたい、抱きたいとか。
こういったアクティヴなものではないが、傍にいることで落ち着くとか、逆にいないと
落ち着かないといった恋愛もあるはずで、大河と竜児の場合はこれみたい。それだけになかなか
自分の気持ちに気が付きにくかったのかな。
2013/08/10
2020/02/22 誤字修正