シェリー さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
森のピアノじゃなくてピアノの森
お金持ちでピアノに自分のすべてを捧げる、消極的だけれど真面目でひたむきな小学5年生雨宮修平と
対極な存在、貧乏でわんぱく坊主の同級生一之瀬海の友情の物語。
転校してきた雨宮は一之瀬と出会う。
この小学校ではある噂が小さく音を立てていた。近くの森の中に音の出ないピアノがあると。
男のくせにピアノなんて弾きやがってと馬鹿にされていた雨宮を見かねた一之瀬は
その噂のピアノを自分は弾けるのだと言い、夜その場所に行くことになった。
実際にそれは森の中にあり、ピアノは綺麗な芝生の上に立ち、月の光を独占していた。
柔らかな光を全身に纏い、○○の神話のモチーフなんだと言われても説得力のある存在感を放っていた。
そのピアノを雨宮は弾いてみる。しかし鍵盤をいくら叩いても音は出ない。
そんなわけがないと一之瀬がピアノの前に座る。そして慣れた手つきで弾いてみる。
すると音が流れた。その音は今までずっとピアノをやってきた雨宮に絶望を与えるほど綺麗な音だった。
一流のピアニストが叩く一音とたまたま猫が踏んで音の出る一音では奏でる世界が違う。
まさに一之瀬が弾く音は素晴らしく、月の光をすべて吸い込んでしまうような演奏をした。一之瀬海は紛れもない天才だった。
そして二人はピアノを通し、友情を深め、それぞれの道を見据えて行く。
対照的な2人の少年を上手く描いた作品だと思います。
この作品で描かれる期間は二人にとって大事な時間でもあり、ひとつの試練でもありました。
対立してしまう2人の様子も心の葛藤も本当によく描けていました。
分かってほしい、理解してほしい2人の苦悩する様子が画面を越えて伝わってきます。
一之瀬の成長をみているのも楽しいし、雨宮のしょっぱい大人な一面もグッときます。
それがしっかりと描かれることで綺麗な音を奏でるピアノの音は幻想的に映え、
2人の演奏はひとりの表現者であることを自覚したような意志の強さが伝わってくるものでした。
良い映画です。