maruo さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.5
作画 : 2.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
男が惚れる男、それが門田紋乃丞 B+
原作既読(ただし途中まで)
OVAは6作出ていますが、全編通しての感想です。
原作は、月刊少年マガジンに連載されていましたが、最後まで読むことなく漫画を卒業してしまいました。OVAが出ていたことも耳にはしていましたが、たまたまレンタルで見つけたので見てみることにしました。
まず、「ヤンキー」なるものを改めて説明しようと思うと、今まで余り考えたことがなかった(当たり前の存在だった)ので言葉に窮します。要は札付きの不良なのですが、1980~90年代のスタイルが一般的に認知されているヤンキーではないでしょうか。格好としては、「氣志團」のそれを思い浮かべていただければ近いと思います。
ヤンキーは自動車やバイクを愛好する者が多く、それにはしばしば(というか殆ど)改造を伴います。そして、彼らはそれぞれ群れをつくり、必然的に暴走族へと発展していくこととなります。行き着く先は縄張り争いとなり、暴行、ときには傷害致死(殺人)に発展することすらあります。この作品でも、そうした暴走族の縄張り争いが描かれています。
この作品の主人公・門田紋乃丞(もんだもんのじょう)は、そんな非道の限りを尽くすような輩とはだいぶ違っています。一見したところ、軟派なイメージすら受けるような人物ですが、どんな権力にも屈しない強い心を持っています。ごく簡単に言い表すと「男が惚れる男」です。ただし、いくら主人公とはいえ、喧嘩が強すぎる(ほぼ無敵状態)というのはアレですけどw
そんな主人公が、バッタバッタと相手をなぎ倒していくのかというと、実はそうでもなく、命が危ない状況に追い込まれることもあります。しかし、それは自分の男気を貫き通そうとしたが故になのです。時には、どうでも良いチンケな野郎のためにすら命を張ります。命がいくつあっても足りないような生き方です。主人公だからこそ生き続けていくのだといえばそれまでですが、他者を惹き付ける何かを持ち合わせているからこそ、何か大きな力によって生かされているのです。
たかがヤンキー、暴走族の話と思ってしまえばそれまでですが、そこに一人の男の生き様を見出すことができるかどうかが、この物語を見る際のポイントだと思います。まあ、暴走族の多くは暴力団予備軍だったので、綺麗事では済まないのは十分承知の上ですけどね。
作品が古いので、作画については期待しない方が良いと思います。原作者が決して絵が上手くないので、キャラクターデザインにも慣れが必要でしょう。特に残念なのは、本作の売りとなる喧嘩のシーンが、動きがもっさりしているような印象を受けることです。漫画の場合は脳内で補いながら見ることができましたが、アニメでは動きから迫力が伝わり辛いのは残念です。
ただ、描かれているのを良く見てみると、結構怖いことをやっていることが分かります。スピリタス(アルコール98%のウォッカ)に火を付けるなんて行為は、この作品で初めて知りましたw 多分、この作品内でやっていることの多くは、昔、暴走族間で行われていたことなんでしょうね。リンチ殺人なんて今でも時々ありますから、外見は時代に合わせて変わって行っても、本質的な部分はそんなに変わらないのでしょう。
以上からすると、おどろおどろしい印象しか持たないかもしれませんが、意外にもギャグが随所に散りばめられていて、重苦しくならないようバランスをとっています。従って、軽い気持ちで見ることも十分可能な作品です(多分)。
一番の問題は、ヤンキー、暴走族という、朽ち果てたテーマに興味が湧くかということなのですがw
追記:
何でも、最近、徒歩暴走族なるものが跋扈(ばっこ)しているようです。にわかに信じ難いのですが、口で「バリバリ」とエンジン音を模している族もいるとか。見てみたいですけど、関り合いたくはないですね。
以下は、この作品に登場する暴走族の一覧です。この順番に出てくるので、一応ネタバレになると思い隠しておきました。
{netabare}烈風隊:隊員47名(人数は四十七士から来ていると思われる)。東京を活動拠点とする超硬派のグループ。自らしかけることはないが売られた喧嘩は必ず買う。ただし、素人には手を出さないというポリシーも持っている。
ブラック・ツェッペリン:300名を越え、東京でも最大級の族。関東一の暴力団・花岡組の一人息子である花岡竜二が8代目総長を務めていた。
紅龍:東京・下町の族。十数名と規模は小さいが何でもこなす極悪チーム。
菊華連合:神奈川県のチーム。烈風隊と並ぶ超硬派のチーム。
殺戮同盟:埼玉県の族。複数チームの連合体。総隊員数は200名超。
遠州地”獄(ぢごく)一家:静岡全域を縄張りとする暴走族。東部の「地”獄会」と西部の「遠州一家」の統一チーム。{/netabare}