りぃたん さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
たった2時間の奥深い傑作、戦時中に子供だった65歳以上の方にお勧め。 ー愚直な飛行機設計技師の物語ー
子供が見るには、ちょっと難しいかな? 大人アニメ。
大人アニメとしては、実はとてもいい作品かもしれません。
後になって思い起こす度に、深い感動がじわじわ来て、
また学びも多く、いいもの見たって感じがしてきました。
感動が、いまだ現在進行中です。
高校生、大学生以上、特に65歳以上。
純粋に飛行機や船に憧れを描いていた
子供時代を戦中に過ごされた方々に、
特にお勧めなのでは、と思われる作品でした。
65歳以上の親御さんや祖父母をお持ちの方、
一緒に、誘っていかれてはどうでしょう。
これは、宮崎翁監督とゆっくりと語り合うような作品。
大正、昭和初期を社会、産業、工業の側面から描いた、
珍しい、見る人によっては懐かしいアニメ作品だと思いました。
工学系設計系の好きな方はどうぞ。
そのため、内外の飛行機や列車や船や家々の大きさが、
映画館サイズで見てこそ、
その力強さや魅力が伝わる動画で、
テレビサイズで見て、宮崎監督さんの伝えたい魅力が
どれだけ伝わるかと思ったりしました。
関東大震災、恐慌、戦争、そんな混沌とした時代を背景に
宮崎監督が、今の日本や若者に何か語りかけているようです。
私も私なりに、いろいろなことを教わった思いです。
一番思ったのは、
時代や状況に流されず、コツコツたゆまぬ努力をすること。
正に愚直なこの主人公、
(庵野さんの声は愚直でぴったりだと思いました。棒読みの素人声が登場するのは、歴代ジブリ作品の特徴の一つなので、監督が求める表現に合っているのでしょう。)は、
こんな厳しい時代の中でも、流されず、自分を見失いません。
{netabare}飛行機作りを、戦時中という時代を越えた先を見据えて、
自分の求める理想の飛行機を作る為に、たゆまぬ努力をします。
そして、儚い夫婦間の愛情を本当に大切にするのです。{/netabare}
一日一日、大切に。
今の日本とは違い、そのまま見習うことは難しいと思いますが、
こういう過去の人々を思う時、感謝の気持ちから
涙がこぼれてしまう私なのでした。
というのは表向き、{netabare}愚直ゆえの美しい飛行機を作ろうとする
まっすぐで熱い思いは、主人公やあまたいる
貪欲なクリエイター達のエゴイズムや残酷さをも、
表されていると思った時に、 {/netabare}この作品の凄さを感じました。
思い返すほど多くの理解が深まり、ずぶずぶとはまっていく
私にとって、恐ろしい傑作の様相を深めています。
この作品の作画の見所は、風と群集です。
最初から最後まで、数え切れないほどの人々が動いています。
これはもう、職人です。
そして、おなかいっぱいに感じるほど多くの風が吹いています。
風は、宮崎アニメの得意とするところです。
草原を吹きすさぶ風、火の粉をまき散らす風、風に舞う粉雪、
そして紙飛行機を飛ばす風。
そして、自然の猛威を前にした時の
畏怖を感じる地鳴りのようなうめき声の圧迫感。
見る人によって、様々な感想を持てる
懐かしい、勉強になる、
もしかしたら高畑監督さん寄りな感じの
作品なのかと思いました。
が、それだけでは終わらない何かが、
この作品にはあるのです。