sinsin さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
腐敗した官僚を描いた本物のガンダム。
【良い点】デントロビウムかっこいい。作画がいい。キャラがちゃんと演技している点。
【悪い点】ややテーマ性に欠ける点。
【総合評価】この作品は、腐敗した政治官僚つまり地球連邦軍に対して、清廉潔白をもって対抗したデラーズ・フリートとの、戦争を描いた物語である。行き着くところテロリズム。
だが、何よりも腐敗した「心」を大切にしない地球連邦に対して「心」を大切にするデラーズ・フリートを、全編にわたって描いた。
しかし、現場の地球連邦軍の士官には、「心」を大切にする常識が残っていた。
バニング大尉(主人公の上官)やシナプス艦長(艦長)は、連邦の中でも「心」のわかる常識人として描かれる。大人になると、二人の友情や考えにとても感情移入できる。
デラーズ・フリートの掲げるジオンの再興が、ザビ家の復権か、正当なジオン・ズム・ダイクンの意思の復活かはわからないが、選民思想であることに変わりないことに注意しなくては、ならない。
アクシズに協力を頼んでいることから、ある程度ザビ家を容認しているが、共闘はしていない。
そのことから、デラーズ・フリートは、ジオンのザビ家とは違う一派であると思う。
まあ、色々と書いたが単純にコウ(主人公男)の青春の物語でもある。
そんな、機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリーの世界観。
地球連邦軍=腐敗した官僚の命令で動く。
対比
デラーズ・フリート=心を大切にする「志」で動く。
物語では、腐敗した地球連邦と、シーマ中佐(デラーズ・フリートの女士官)癒着も描いた。
しかし、それはエギーユ・デラーズ中将(デラーズ・フリートのなかで一番えらい人)の知らぬところ。
その地球連邦の体質が、後のZガンダムのティターンズにつながってゆく様だ。
次にキャラクター。
ガトー少佐(デラーズ・フリートの男士官)=人の心を大切にする=部下の命を大切にする。
対比
シーマ中佐=人の心を大切にしない=部下の命を大切にしない。
ガトーは、無駄な信号弾一発で、味方デラーズ・フリート軍の志気を高める。筆者がほれそうな男だ。
ケリィ(元ジオン兵片腕)のエピソードの時、シーマ中佐の部下に対しての価値観は、ガトーとは、対照的に描かれている。
コウ=男の繊細さ、不器用さ、未熟さ。
対比
ガトー=男の強さ、志の強さ。
コウの戦う理由は、ガトーに対するコンプレックス。そのコンプレックスが、コウを一人前の兵士に育てた。ニナ(MS兵器製造会社の女)とゆう彼女の助けもあった。ガトーとコウで男の二面性を描いた。
テーマとしての、機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー。
コウ、ガトー=男の「戦い」。
対比
ニナ=何の価値も生み出さない「戦い」を否定。
テーマは、「男と女の戦争へのとらえ方、価値観の違い」だと思う。ニナの掘り下げは、浅かったと思う。その分テーマ性が薄くなってしまった。
ラストは色々あって、ニナは昔付き合っていた敵のガトーを助ける、それは「戦い」に何の価値も見出せない彼女にとっては当然の行動。理由もわからず裏切られたコウ。
コウにとってそれは、現実認知。
最後ガトーは、ニナのためにコウにとどめを刺さなかったようだ。
ガトーは、戦争に負けたのに投降しなかった、志を押し通し、死んだ強い男。
コウも、最後は、全ての事件を受け止めニナと一緒になったようだ。
Zガンダムに、移行する前に地球連邦の汚い官僚政治、癒着体質を表現する上でデラーズ・フリートは、精錬潔白である必要性は、演出上十分あったと思う。ジオンが選民思想だとしても。
上手く次作Zガンダムとの間を、補完していると思う。
戦闘シーンの絵コンテはスピード感は、ないがよく動き、具体性があって良い。
今はなき、逢坂浩司氏また、絵コンテ渡辺信一郎監督など多くの若い才能が集まってできた作品。
その、作画による巧い演技は、今のアニメでは、珍しい。
キャラ崩れもほとんど、気にならないレベル。素晴らしいクオリティの作品。
この当時のサンライズの本気を見た。