sinsin さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
コレは未来に残すべき遺産。
【良い点】ゆっくりとしたテンポで、高密度。無理のない展開。ゴーグがチート。
【悪い点】ガイルの対ゴーグ戦術。ゴーグがチート。
【総合評価】巨神ゴーグを観終って、色々と複雑な気持ちがあるのだが、このアニメをみて感じた事は、「果たしてアニメは省略、ごまかしの誇張の文化か?」とゆうことである。
巨神ゴーグは、歩く、殴る、格闘シーンが枚数をかけて丁寧に表現されている。勿論、必要最低限動かしすぎない作画である。
派手で抽象的な演出は、あまり多くみられない。
だが、巨神ゴーグは朴訥で素朴で素直な良さがある。ゴーグの挙動が美しい。そのゆっくりとしたテンポの演出に、ゴーグは良くあっていて、気づけば心からアニメを動画として楽しんでいる筆者がいた。
巨神ゴーグとは、そうゆうアニメである。
1998年サモア東南2000キロ、オウストラル島(架空の島)が舞台である。そこには、異星人の遺跡があるとゆう。
そこに、ガイル(巨大複合企業)は、秘密裏に調査をしていた。
一方、民間のオウストラル島の研究者田神悠宇(主人公)の父はガイルによって殺されてしまう。
田神悠宇は、父の友人ドクター・ウェィブを訪ね、謎に満ちたオウストラル島への旅が始まる。
そんな、巨神ゴーグの世界観。
現代社会、厳しさ=ガイル。
対比。バランス=田神悠宇。
異質感、救い、希望、生産的可能性=ゴーグ。
ガイルは、現代社会の比喩だとゆうことは、すぐにわかると思う。リアルな近代兵器や、組織設定から資本主義社会のリアルな部分を表現していると思える。
それとは、対照的にゴーグは何か神秘的なものとして描かれる。何かこう、人知を超えたものとして描かれる。
田神悠宇は、その二つをつなげる存在である。最終的にはゴーグは、ガイルを守るためにも戦う。
ゴーグと、ガイルとゆう組織を結びつけたのは、田神悠宇のおかげであると思う。
どちらか一方が、相手を倒すのではなく、「和解」に持ち込んだとゆうことは、素晴らしいと思う。
ゴーグは、武器を持たない。それは、相手の可能性を奪う事を否定する事ではないか?。まあ、劇中途中で飛び道具を持つ事もあるが。それでもたった全話の中で1、2話だけなのである。それも、落ちていた武器を改造するとゆう道具の「未来への可能性」を象徴するものだと思う。
ほとんど全話、素手での戦いがメインである。ゴーグのその力は、あくまでも自衛の為の力であり、相手を倒す力ではないような気がする。
以上のことから巨神ゴーグのテーマは、「未来への和解への可能性」だと思う。
それは、ラスト田神悠宇がゴーグと別れ、旅立って行く事からもそう言えると思う。
巨神ゴーグは、巨大ロボットの人型の合理性を表現する為に手足を使った肉弾戦の描写が多い。それにゴーグが戦わない事も多い。それでも、それがかえって無理のないストーリー展開を作り出している。それが、大人でも抵抗感なく視聴できる事につながる。
しかし、ガイルの対ゴーグ戦術が、めちゃくちゃすぎる。ゴーグの攻撃は、基本パンチである。たまに投擲もするが…。
ガイルの重火器が効かないのはしょうがないにせよ、わざわざゴーグの手が届く範囲まで近づかなくてもよかろうに…。ヘリコプター、戦闘機がゴーグの射程まで低空飛行することがおかしすぎる。
対ゴーグ戦術は、高高度、長射程から狙い撃ちが基本だと思う。
そして、地雷原までおびき出し足を止め、落とし穴におびき出すのが理想であると思う。
ガイルが、現代社会を表すならそのぐらいやっても良かったと思う。
巨神ゴーグは、巨大で人型であるとゆう利便性を表現している。ゴーグの手に乗ってみたり。
そして、ゴーグと等身大の人間を映像的に多く対比させる事によって、絶えず画面からゴーグは巨大だとゆうイメージを作り出している。
中割りの難しそうな作画。ゴーグは、いつも重量感たっぷりに斜めに歩く。
ワンシーンワンシーン丁寧に作られている。根本的に84年制作のTVシリーズとは、思えないクオリティ。
それは、ゆっくりとしたテンポのなかに高密度な作画演出といった感じである。
キャラクターの深い造形を支える作画での人物描写、繊細な表情、ボディーランゲージは、今の時代にあってもその表現能力は、色あせる事はない。
ここまで、キャラクターに拘れるアニメーターは、本当に少ないと思う。立体的で奥行きを感じるレイアウトも良い。
この作品は、アニメーター安彦良和の頂点だと思う。
ゆっくりとしたテンポながら高密度で、無理のない展開で本当に面白い。素晴らしいアニメだと思う。
その分、最終回は物足りなかったが…。
ゴーグは、ワンシーンの完成度はすさまじいが、それは実は主人公の視点ではなく絵画的とゆうか観測的観方ではないかと気づいた。そこにゴーグの普遍的価値を感じると同時に感情移入のしづらさを感じてしまった。
そして安彦監督は、映像作家ではなくやはりイラストレーターなのかもしれないと思った。
しかし、ワンシーンにかける心意気は、凄まじい。そこは、評価されるべきところだと思う。
ゴーグは、万人が楽しむアニメではないかもしれないが評価されるべきアニメであると思う。