にゃんた さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
深みは無いが、厚みはある鬱作品
本作に大きな影響を与えた『必殺シリーズ』の池波正太郎小説、および設定が似ている『スカイハイ』の愛読者として、それらと比べて視聴したからか、序盤は苦笑してしまうくらい残念な内容。
OP・EDなどの音楽、ハマり役の能登さんを始めとする声優、演出と作画、それぞれ雰囲気作りが上手く、素晴らしかった。
しかし、肝心のストーリーが陳腐(悪役の掘下げ不足、展開のリアリティと説得力不足)で、物語の特徴である「鬱」を活かすのに必要な「奥深い哀しみ」が全く伝わってこなかった。
「ちょっと暗い水戸黄門」とでも言えるほどの、薄いテンプレストーリーだった。
この調子で2クール続くのかと思うことが、むしろ鬱だった。
(感情移入するために、どの程度のリアリティを必要とするかによって、感じ方に差が出ると思う)
しかし、中盤以降、物語のクオリティが少々上がり、さらに徐々に動き始める。
相変わらず、悪役を中心とした登場人物の掘下げもストーリー展開も甘いものの、
サブキャラクターを絡めることによって、物語全体を対象としてサスペンス色を強める方向に転換した。
物語の「深み」を出すのではなく、「厚み」を持たせる感じ。
この「厚み」だけでも、何とか視聴を継続できた。
人によって異なると思う(もちろん、1話から感情移入できる人もいると思う)が、私の場合は11話くらいからようやくまともに視聴できるようになった。
序盤で感情移入できない方は、
「序盤は仕組みを紹介するだけの、ちょっと長めのプロローグに過ぎない」
と思って視聴すると我慢できるかもしれない。
この内容であれば、1クールで十分描けたと思う。中盤以降も、エピソードの質にばらつきがあり、冗長に感じた。
また、終盤で明かされる柴田一と妻のエピソードについては、もう少しダークさがあっても良かったと思う。
もっと暗い衝撃があれば、より強い余韻を残せたはず。
テレビ放送ということで遠慮があったのかもしれないが、ここは踏み込むべきだったし、踏み込めたと思う。