退会済のユーザー さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
この憂いをスルメにして
なかむらたかし監督の描く登場人物は、静かに表情を押し殺したような、憂いを帯びたじっと構えるような表情が特徴ですね。ハツラツと明るい表情を全面に出すのは好みじゃないんでしょうね。(トーマの始めの頃や父母は、ハツラツキャラですが。)
そこが、こちらに積極的に訴えてきて来てくれないと感じてしまうと、物語に入り込みにくいかもしれない。
しかしこんな表情ばかりの登場人物を描く物語って、今なかなか無い気もします。稀有です。
そしてじっと見続けていると、そのシンプルな線の微妙な変化に豊かな感情表現が潜んでいるのがじわじわ伝わってくる。この微妙さが逆に凄いなと思う。口の動きひとつで笑を表現する、ガラスの仮面の北島マヤ的な?!
物語について。黒マントの少年少女が古都を駆けてゆく。何かを追いながら、また何かに追われながら。そのストイックな姿に気持ちを引きつけられ、謎を知りたくて見続けました。
やはり、ここでこちらに説明してくれる派手なエンターテイメントを求めてしまうと、ついていけないかもしれない。地味な中にじわじわ潜む悲壮感、切迫感。もうこれはなかむらたかしというジャンルだと思ってその雰囲気に浸っていると、パズルが組み合わさるように伏線と謎が炙り出されてくる。
ラストは案外形良くまとまっていて、美しかったです。
説明不足で余韻を残すということは全くなく、全てのキャラクターがきっちり着地していて良かったです。
終局後は流石にみんな穏やかでハツラツとした表現を取り戻しましたね。島の先生的な再開シーンのハツラツさ加減には自分も吹きました。いや、それでいい。
鍵となるギリシアでの世界が、神話的な部分のみだったのが、もっとそこに住む人々の生活感を知りたかったかなと思いました。
王族と兵達だけしか出てこなかったので。