ハト さんの感想・評価
2.7
物語 : 3.0
作画 : 2.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 1.0
状態:途中で断念した
良くも悪くもB級パニック映画的なアニメ
突如現れた巨人という圧倒的な力を持つ生物の侵攻を前に、人類は巨大な城壁を作り生活圏を確保することで約100年の平和を実現させてきた。しかし突如壁は破壊されて巨人の侵攻を許し、平和は絶望へと変わる。そんな人類の存亡をかけた巨人へ反抗と、この巨人のいる世界の謎に迫るダークファンタジー。
世界観はファンタジーであり、いわゆる中世~近代の価値観、風俗、生活様式に近いものに、ガスとワイヤーによる空間移動技術や大砲などの火器が存在する技術レベルをミックスさせたファンタジー世界になっています。
広大な世界があるものの、人類の脅威である巨人によって閉鎖的な生活圏の中で侵攻してくる巨人との防衛戦をメインに話が展開するので、逆に巨人がいる壁の外がどうなっているのか、この世界全体がどうなっているのかという好奇心が自然と駆り立てられるようになり、話を追って行くモチベーションの要因になっていると思いました。
巨人が人類をエサにしているという残虐性や、その絶大な力を持つ者に対して人類は成す術がないという立ち位置で描かれることで、強烈な絶望感を醸し出しているのも特徴です。しかし人間が捕食されるようなグロテスクな表現などを用いた魅せ方には、リアリティと感じ好感を持つ人もいれば、純粋に気持ち悪いと嫌悪する人もいます。この辺の作風については賛否別れる部分だと思います。
上記で話を追って行くモチベーションについて触れましたが、中盤の展開まである種パニック映画的なインパクトやサプライズを話の構成に多様することで視聴者の心を掴んでいき、作品の世界に入りやすくなっているのも良い部分だと感じました。
作中の敵である「巨人」の風貌は非常にシュールでは可笑しくもあるのですが、それと相反するような無慈悲で残虐的な奇行の数々は、人類側(視聴者側)から見れば、生態が謎に包まれているという設定と相まって非常に怖いと感じ、得体の知れない気持ち悪さと恐怖を演出するのに一役かっています。
また巨人と戦う手段は立体機動装置でのワイヤーアクションであり、巨大な敵と戦うシーンは非常に動きますし、アニメ的に映えて非常に良い部分です。
世界観や舞台、ストーリーとしての面白さはあるのですが、それを補強していく世界観の考証や、感情移入すべきキャラクター達の心情描写、この作品の要である絶望感の演出部分、ストーリー構成など、多くの部分が非常に稚拙な表現になっているのが目に付きます。
例えファンタジーの世界であっても話の展開を説得してくれるような設定や裏づけは必要だと思いますが、この作品ではその設定が一定ではなく、場面や展開に合わせて都合よく変わっていくように感じられます。
例えば巨人は絶大な力を持ってはいますが、動きが鈍かったりしていたものが、展開によってはありえないようなスピードで飛んだりする狡猾な面をいきなり見せたりします。そのような行動をした時に登場人物からのこれといった反応はなく、許容されてるのも違和感がありました。
また戦闘シーンでは、弱点を狙う為に立体機動装置を使うのは絵的にも凄い良い素材になってはいるのですが、大砲でも結構ダメージを与えれてしまっているので、"人類が恐怖と対峙する根幹"である危険を冒してまで接近戦をする説得力が弱くなっていると思います。
登場キャラクターは非常に多いのですが、心情描写や掘り下げは少なく非常に薄っぺらく感じます。メイン3人に関しては子供時代の回想など、行動原理が示されてきますが、とにかくそれ一辺倒でしかなく、人間味を感じられず感情移入ができません。またそれ以外もほぼ恐怖という部分しか描かれないまま、死んでいくことが多いので未だに顔と名前が一致しにくく、死んでしまう嘆きや絶望感が滑っている感じがしました。
しかしその中でもアルミンとジャンは人間味溢れるキャラだなとは感じました。
この作品は絶望的な状況から反抗する人類を描いていますが、その絶望を表現する演出を含め、演出全体が非常に安っぽく、ストーリーの良さの大部分奪っていると思います。
人が恐怖を抱く時の反応が毎回叫びや「嫌だ」など拒否のセリフばかりであり、長く続いた平和が突如脅かされる前半の展開では納得はできるのですが、それから何年も経ってるにも拘らず最初から皆同じ反応ばかりにはさすがに、またかよ!って気になります。
例えば、演説を聞いてるときに震えが止まらない兵士の足だけ映しても、それまでに怖いということは伝えられてるので視聴者には十分伝わると思います。
またミカサの心配する気持ちをエレンにとっては鬱陶しく思う心情描写のところも、前にやった頭突きの行を再度やったりします。視聴者は一度見て、エレンの気持ちは伝わっているので、同じことをしなくとも作画芝居や1セリフで伝わることだと思います。
意味のある演出でもアプローチを変えてやってもらわないと、さすがにくどく感じます。
ストーリー構成は、前半の展開は原作消化も早めでスピード感があり、中盤からは非常にテンポが悪いアンバランスさを感じます。これは引きや超展開を重視して各話を構成していったのではないかという考えが見えます。"テンポが悪い"というのは決して悪いことではないとはないと思っていますが、その分、十分な尺を使ってやる必要がある大事なことがあるかと言えば見出すことができませんでした。これでは露骨に尺伸ばししてると思われても仕方がないと思います。
進撃の巨人は、その奇抜な世界観や設定、好奇心をくすぐるストーリー展開などは見事だと思います。
しかし設定の曖昧さや稚拙な演出、叫んでばかりいる人類側のバカっぽさのせいで、シリアスなストーリーがギャグのようにしか見えません。全体的な作風の本質は安っぽいB級パニック映画的であり、不意打ちのインパクトとサプライズで大部分が構成されていると感じました。これは初見では楽しめるかもしれませんが、何度も見たい魅力があるかと言えば、まったくありません。
壁の外の世界や巨人の謎など今後の展開は非常に興味を惹かれます。"この世界はこうなんだ"、"人間達はこういう存在だ"みたいな寓話的な結末になるのか、はたまた違った展開になるのか、今後の展開に期待したいところ。
1クール+数話評