buon さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
心の旅 ~穏やかな情景とメロディが織りなす物語~
別れの物語であり、人の物語
1クール、同人誌原作
前情報なし、「灰羽連盟」という名前とパケ絵に惹かれて観ました。
※ネタバレを含む感想です
{netabare}
はじめに言っておくが、これはドキュメンタリーのような作品だと思う。
ちょっとした事件はあっても、ラスボスはおろか敵がいるわけでもなく、むしろ優しい人ばかり。
何かの頂点を目指すものとも違うので、壮大なファンタジーやドラマを期待する人には向いていない。
異世界で繭から生まれる、灰色の羽をはやし、頭上に天使の輪を授かる「灰羽ハイバネ」たちが主人公となる。
なぜ繭に包まれ成長した姿でそこに生まれるのか、灰色の羽をはやすのか、輪を授かるのかなど、
不思議なことはたくさんあるが、作中では明らかにされていないし、大した問題ではない。
色々と想像することも楽しみの一つなのだろう。
世界観は、
ヨーロッパにある閉ざされた小さな国のようで、風力発電はあるが生活様式から20世紀前半から半ばにかけて。
時計台を中心に放射線状に伸びる道、波紋の様に広がる街並みからフランスの凱旋門みたいな感じはするが、
色彩の簡素さ、道や広場に敷き詰められた石畳を見ると、まるでドイツかそれより東の国のよう。
主人公たち灰羽は、その国に住む小さな民族、あるいは少数派の宗教団体と置き換えても、あまり変わらずに物語を展開できそう。
売買の仕組みが若干異なることを除けば、ほとんどノンフィクションの世界にある生活と変わらない。
働いて、食料や衣類を買って、日々の生活を営む。
つまりファンタジーを取り除けば世界名作劇場と言っても差支えなさそう。絵柄も少し似た雰囲気を持っていて、男女の差はあまりない。
ファンタジーとなる部分はきっと、心象風景を最大限表すためにあるのだろう。
物語は「落下ラッカ」が生まれることから始まり、彼女の視点で進む。生まれる前に見た夢から名前は決まる。
そして「礫レキ」「光ヒカリ」「川魚カナ」「空クウ」「眠ネム」と友達になる。
この作品を観ている私たちは、ラッカと共に世界を見てハイバネについて知ることになる。
5話までは穏やかな時間を過ごすことになるが、
6話で事件が起きる。
そのことをきっかけ、ラッカは悩みと苦しみが続く。
楽しい話はほとんどなく、重くツライ話が多い。
やがて壁にたどり着く。
結末は解決でも、幸せな終わりでもないが、そういうものなんだろう。
いつも忘れてしまうことである。
人間誰しも強いわけではないから、きっと共感することがたくさんあるだろう。
繰り返し観るのではなく、何年かに一度、観たくなるような作品。
・・・色々知ったか振りをした感想だが、とにかく好きな作品。
これが同人誌原作とは、プロの漫画家さんはつらいな。
パッケージと原作を描いているのは有名なイラストレーターさんみたい。ちなみに作中のキャラデザとは大分異なります。
2002年と10年以上も前の作品ではあるので最近の作品の様に緻密な背景や動きはないが、それでも吸い込まれるような上手さを感じる。
この作品って観る人や時間によって、見えるものが変わってくるのだと思う。○○の物語ってのも。
いずれにせよ、私にとってこの作品は名作です。
{/netabare}
※以下、視聴済みの方以外は読まないでください。閲覧注意。
{netabare}
この作品を観終わる頃に気づいたが、これはレキの物語だったんだなぁ。{/netabare}