「カラフル-Colorful(アニメ映画)」

総合得点
64.2
感想・評価
413
棚に入れた
1778
ランキング
3936
★★★★☆ 3.5 (413)
物語
3.8
作画
3.6
声優
3.1
音楽
3.4
キャラ
3.4

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ハンニバル将軍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

カラフルな世界を知る物語

「クレヨンしんちゃん」「河童のクゥと夏休み」で、
家族の絆を描くことに定評のある原恵一監督作品。
私は特に「オトナ帝国の逆襲」が好きだったので、その繋がりで本作を手に取りました。
内容は期待通りの家族愛を主軸とした(また幾つかのテーマも含んだ)奥深い物語で、
特に後半の演出には涙がポロポロと零れました。
背景や表情の繊細な変化など、描写が本当に丁寧なんです。

ただ如何せん地味な作品なので……どれだけの人に興味を持ってもらえたのか、
やや疑問を感じる所ですが、私としては太鼓判をドンドコ押し倒したくなるほどの傑作でした。

死後の世界で天使(?)から、自殺した見知らぬ男子中学生「真」の体に憑依(ホームステイ)して、
「忘れてしまった自分の生前の罪を思い出す」試練をクリアすれば、
もう一度生まれ変わるチャンスを与えると告げられた主人公。

彼は真の生前の人柄、人間関係、そして命を断つに至った経緯を探りつつ生活していきます。
「どうせ他人の体だから」と思い切って楽しんでみたり、
逆に家庭や学校での真の陰鬱な境遇を知って苛立ち、自暴自棄な行動に走ってみたり。

真の家族(父、母、兄)は彼らなりに、
特に母親はそれはもう必死で、奇跡的に蘇生した息子への心的ケアを試みるのですが、
彼女が犯した(真を自殺に追い込んだ一因でもある)「ある過ち」を理由に、
主人公は執拗に辛く当たります。
その様が、かなりキツイ…。
自殺する程こじれた問題なので、乗り越えるのに強い痛みは伴うのだろうなぁとは思うのですけど…。
しかし主人公が第三者目線で物事を見つめ、心を閉ざしていた真とは異なる振る舞いを見せることで、
周囲の人々の新たな側面が浮かび上がってきます。
八方塞りに思えた真の状況が、それぞれの個性や事情や想いといった、
世界のカラフルな多面性を知ることで変化していくのです。

個人の視点というのは、物事の一面を見ているに過ぎないこと。
綺麗な色も、汚い色も、どちらも混じり合っているのが人間だということ。
人生は変えられるということ。生きている価値を、忘れないこと。

後半に流れるアンジェラ・アキの楽曲「手紙」が、作品のテーマにピッタリとリンクしています。
胸が裂けるほど傷ついた思春期、大人になっても途方に暮れることがある。
それでも「今を生きている」。本作の重要なキーワードです。

唯一惜しいのが、一部キャストの台詞が棒読みな点。
ただ主人公の初めての親友になるマイペースなクラスメイト「早乙女くん」の演技は素晴らしい!
すごく自然体なのに心に残る、彼の言葉の表現力が見事で、感激しました。
本職以外の役者さんの起用ってホント、当たり外れが激しいなぁと実感します。
ちょっとした気遣い、些細だけど暖かい言葉。
特別なことでなくとも、そうした日常の小さな優しい干渉が、
「自分の事を気にかけてくれている人が居る」という認識を与えてくれて、
人の心をここまで救うことがあるのだという事に気付かされ、
鑑賞後はとても爽やかな気持ちになれました。

投稿 : 2013/07/18
閲覧 : 207
サンキュー:

4

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