じょー さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
1秒で超える永遠
空の境界5作目、正直4章があまり話がすすまず今ひとつで、続編を躊躇していたのですが、本作は原作者の言うところの最終章との事であり、この後のストーリーが時系列に戻ることから、一つの区切りとして鑑賞。原作未読、単体評価です。
全体として、今までの5章の中で、3章と同じ程度もしくは、それ以上の出来だったかと。能登補正を抜くと一番の出来かも知れません。構成がかなり難解に見えますが、実は時系列がバラバラになったところからキーだけ拾っていけば、矛盾螺旋と空の境界で話がちゃんと進むというトリックかなと思います。
陰陽道の太極図と、矛盾螺旋、螺旋矛盾の黒と白のカットにおいて、相反する2つの対立の構図、例えば本物と偽物、生と死、曲線と直線のイメージを植え付け、またそれに対応して人物の対立を描かれていく。繰り返される扉を開ける幹也のカットにて、時系列の切り替え、そして構図による視点で第一人称を切り替え、螺旋の中に閉じ込められる錯覚を作り出し観る物を一度混乱に陥れる。そして、最後にはストンと直線的な”落ち”に持って行くという手法でした。多少技巧に走りすぎ、観る物に集中力と理解力を要求する出来ではありますが、興味深い試みだったと。
対立軸では、巴というまさに太極図の縮図の様な本物で偽物の”人間”が、最初から最後まで存在感薄く、極めて俗物的でありました。最後にその俗物的な思考による特攻により物語のキーへと昇華し、本物である荒耶に隙を与えた事により、物語が収束に向かいました。
対称的に明らかに異常な状況に常に冷静で、のんびり免許を取りに行っていた幹也の不気味さや、すでに本物と偽物を超越した存在であった橙子の異常さが浮き彫りになりました。
そして、戦闘シーンは、今まで以上の迫力でした、小川マンションでの最初の人形達との殺陣は素晴らしく、式の躍動感ある動きが素晴らしかったです。魔術を使っての荒耶と塔子の戦いもグロでしたが秀逸でした。
鍵をほしがる式も、ナイフで枕を刺す式もなかな可愛らしかったです。
この作品で何が一番ショックって、ロケットペンシルが死語って事に心臓が止まりそうになりました。