plm さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
別の環境に踏み出そう。そして物事に悩み、考える、酪農物語
私的分類【青春酪農物語、情熱、心理描写、知識や思考、コメディ】
農業高校を舞台に酪農・畜産をテーマにした、どこか経験談風なところもある青春ストーリー。
主人公が別の環境に踏み込むことにより、違う価値観に触れて何かを考える、という構成であるため
視聴者も近い感覚で普段関わりのない環境を追っていくことができる。
■「命を扱う」テーマは重い?
青春系、情熱系などと言うと「暑苦しい」というイメージがあるかもしれない。
また食(動物の命)を扱うというテーマであることや、精神面の変化を描いていることから、
喜怒哀楽でいえば怒りや哀しみを扱うようなシリアスさ、重い物語性を思い浮かべるかもしれない。
しかしこの作品は、一貫して「喜び」や「楽しさ」といった素朴な感情を起こさせるような
コミカルなお話作りで展開されていく。なので視聴後感はすっきりとしている。
■この作品の見所の一つは、悩み、考えること
主人公八軒の精神面を掘り下げていくシーンであるが、その感情について多くは語らない。
観る者に想像させるようになっていて、視聴者がどう感じるかを大事にしているようにも思う。
観てる側にとっても、とても考えさせられる作品であると思う。
▼じゃああなたは何を考えたの?と聞かれそうなので、自分が考えたり感じたことなど雑文
{netabare} ・食と家畜について
動物を殺して食うことについて、銀の匙の中では考えていくべきものとされているが、
「美味いのだから仕方がない、止められない」というところに行き着いているようにも思う。
しかし、これを「そりゃそうだ!それは明白な論理だ!」と納得しきれるかどうか。
これについてさらに言及している「金魚王国の崩壊」というWEB漫画がある。
主人公のミカゼは身近な虫や魚の生き死にに触れ、「食」が同様に生き物を殺すことだと知ると、
肉を食べることを止め、菜食主義に向かう。それでも、たった一個人のささやかな努力では、
動物を殺している現実は変えられない、何の意味も成していなかったことを実感してしまう。
実際のところ、これが一番納得できる考え方であるように思う。
「美味しいから食べる」ことを選んでいるのではなく、人間社会に構築済みの大きなシステムの前に、
自分たちはそれを「食べるかどうか選ぶ」ことはできても、
理由や論理を持って、殺して食べるべきかどうかを考え、選択する力は持ち合わせていないのだ、と。
それでも、一度考えたことでも何度も考え直すことは、昔とは違う答えを求められるかもしれないことだ。
視野を広げ、違う価値感に触れ、考えを改め直すことは、よりよく過ごすために大事な刺激だと思う。
この作品を観て、何かを知った気になって「命の尊さ」を説くのはなんだか違うように思う。
命について「悩み、考えることの尊さ」こそが本当に伝わってほしいものだと感じた。
{/netabare}
前期の「ちはやふる」と並んで、より幅広く観ていただきたいなと思わせられる良い作品でした。
視聴始めの感想{netabare}
なかなかええやないか!
序盤地味な始まり方で、どう展開するのかなーと不安だったものの、
主人公と周囲の人物像や対比が堅実に描かれていて、少しずつ入りこめていった。
鶏卵を主軸に1話で起承転結がまとまっていたのも良く、今後の物語に期待感を膨らませる内容だった。
でも少し生々しい現場の描写は、こういった畜産業に携わらない人からすればちとキツいかも。
それゆえに新鮮で、考えもしなかった食との関わりについて知見を与えてくれるものかもしれないが。
そんなテーマなだけあって、真剣に描かれた作品として一味違って観れるかもしれない。
2話 農業校の朝は早い
前回の反省を活かし、物事に先入観を持つまいと決めた八軒くん。なかなか強かなメンタルじゃないか。
ことごとく理想や甘えは打ち砕かれていく環境で、周囲とのギャップに悩みつつも、
ほんの一時の食事や、新しい経験に喜びを覚えている様子。まさに家畜の奴隷やー!
人間、環境が劣悪になればなるほど、高望みせずに満足できるようになるし、
労働に精一杯で余計なことを考えなくなるので、慣れてしまえば幸福の形の一つかもしれない。
御影さんは圧倒的ヒロイン力を放っているが、八軒とはまるでフラグが立ちそうにないこの鉄壁感。
{/netabare}