sinsin さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
前作よりも濃密になったキャラクター設定
【良い点】濃密な人間ドラマ。綺麗な作画。
【悪い点】前半、アオの世界観があまり表現されていなかったように感じてしまう。つかみが弱い。インパクトに欠ける。吉田さんの作画がなくなったこと。
【総合評価】観終わってしまったんで評価してみたいと思う。
まず初めにこの作品はアオの成長物語とかキャラクターの好き嫌いで楽しむアニメじゃないなと思う。
狭い観点でこの作品は絶対語れないだろうし、観終わってみるとこの作品の制作に携わったスタッフはじめ京田監督の思いのようなものは確実に伝わってくるような気がしてならない。
早い話この作品、人間ではないコーラリアンの女性エウレカと恋に落ちたレントンの人生への復讐の話だったように思える。
このレントンとエウレカには第一子に女の子がいた様だが3ヶ月程度で死に絶えてしまったようだ。
終盤明かされるこのエピソードが非常に重要でコーラリアンと人間の子供はトラパー濃度の高い地域またはトラパーの存在する世界では長生きできないと言う事らしい。
すなわちであるなら、スカブコーラルをなくしてしまえばコーラリアンの女性エウレカとレントンは出会うこともなく悲劇も起こらないだろうと言うレントン、エウレカ夫妻の世界への恨みの話でもある。
終盤アオは父親レントンに向かって何かと戦わないといけない呪縛。と言うかレントン、エウレカが出会って結婚して子供が生まれて生活にしがらみが出来て自分の生活を守る為に何かと戦うようになってしまうような事、自分達の人生を恨む事、そんな大人のエゴををアオは諭そうとする。
スカブコーラルの存在を消してしまえばアオの大切な幼馴染のナルの存在が消えてなくなるかもしれない。アオにとって13年は長いんだろうなぁと。
13年生きたら、それだけで状況は変りいろんなしがらみが出てくる。
レントンのエゴはアオにとっては迷惑な押し付け親切になってしまったわけである。
アオは、最後しがらみの存在しない世界へと旅立ってゆく。
何度もいうけどこの作品を成長物語のしがらみやネタアニメのしがらみ、キャラクターアニメのしがらみで見ないでほしいと言う京田監督に意思を感じてしまう。
エウレカセブンAOの世界観。
ゲネラシオン・ブル=享受。・対比・スカブ、トラパーによって起こる悲劇。レントン夫妻。=絶望。
対比。均衡をもたらす力=シークレット、2度目の改変世界のトゥルース。・対比・不均衡をもたらす力=2度目の改変前の世界のトゥルース。
エウレカ、スカブ=希望、可能性。スカブによってもたらせられる富。・対比・沖縄。ナカムラ=否定。閉塞感。
24話でよく詰め込んだなぁと言った印象。
トゥルースには、2つの意味がある。世界改変前後で設定ごとぜんぜん変ってる。
こうやって見てみると非常によく出来てる様に思える。
トゥルースやレントン、エウレカがしがらみに縛られている事からテーマは「不自由な世界を恨むな、しがらみに縛られるな」だと思う。コレが元々自由な空間演出が巧いと思える京田監督の言いたかったことじゃないかと思う。
だから、この作品をジャンルでカテゴライズして観たり、評価してしまうのは無粋だと思う。
そもそもそういった観方されるのを嫌ったんじゃないかと思う。
濃密なドラマ性。
この作品の売りはなんと言っても濃密な人間ドラマだと思う。でも殆どの人はエウレカセブンに対して求めてるのはキャラクターの好き嫌いと板野サーカスだったと思う。
そのせいで、あまり濃密な人間ドラマとしてよく観てくれる人は少なかったと思うのであるのがとても残念だと感じてしまった。
コレはおそらく京田監督がエウレカセブンのしがらみに縛られたくなかったと言う事だろう。
前作よりもよりキャラクター設定が深くなって細かい感情表現が全24話に詰め込まれている。
30分の中にキャラクター達の葛藤、安らぎ、笑いが前作とは比べ物にならないくらいに良く表現されていたと思う。
特に最初の方の暗いエピソードなんかは今観終わった後考えると京田監督苦手そうなんだけどがんばってる様に思えてくる。
京田監督としては今回の作品では伏線と、予想を裏切る意外な展開を創り出すことに注力した印象。
そのことによって、ロボットアニメだから表現できるドラマ性、世界観、作画アクションをとにかく突き詰めたなと言った印象。
とにかくキャラクターに創りこみが凄く、前作よりもより複雑な人間関係でドラマとして楽しめるのだ。
ここまでドラマとして楽しめるのは稀有な作品だと言える。
作画演出。
それほどよく動くと言った印象は受けないのだが、動く時はちゃんと動くメリハリのある作画だと感じた。
26話でクオリティを維持したまま制作しようと思ったらよい選択だと思うが、いかんせん13話ぐらいまでは戦闘シーンが退屈でたまらない。勿論、演出の方向としては人間ドラマで魅せる方向なのでその辺は勘弁してくださいって感じなのだろうが、14話ぐらいから戦闘シーンがよく動きより派手になってくる。
私としては一安心と言ったところ。戦闘シーンがつまらないのはアニメにとっては致命的だと感じてしまったほどだった。
この京田監督の戦闘シーンって具体性をあまり感じないんだ。殴り合いとか殆どない。
まず、重火器もって射撃したりミサイルよけたりするだけである。個人的にはもっとブーメランナイフをもっと活用してほしかったところ。そのことによって人型の説得力とか汎用性とか出てくるから、そのほうがロボットアニメとしての広がりがあってよいんじゃないかと思った。
絵コンテはやや、アニメよりも実写ドラマに近いように感じた。特に序盤で沖縄の風景を広く表現あまりしていなかった印象。それは今思えば意図的な演出だったのかもしれない。しがらみに縛られた沖縄を表現する為に。それでもアオがどういったところに住んでいるか人間ドラマだけではなくもっとビジュアルイメージで表現しても良かったんじゃないかって思う。その為冒頭のつかみが弱いと感じてしまった。
冒頭のつかみと言ったら、ナルの存在だろう。正直もっとおお化けすると期待していたのに…。
あと個人的には、キャラクターが空を飛ぶところの吉田さんの作画がなかったのが非常に残念だと感じた。
作画はその濃密な人間関係を良く表現していたように思える。全く感服するばかりだ。ボンズの仕事には正にコレがサンライズの歩んできた歴史を観るような感じがした。
この作品は人間ドラマで魅せ、ロボットで世界観を表現する日本独特のファンタジーで、リアルロボットアニメと言う名の80年以降富野監督の創り上げた直系の作品であると思う。
個人的にはとてもいいと思う。