STONE さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
捨てることによって、得られるもの
原作は未読。
いかにもジャンプ系のギャグ漫画原作らしいなって感じで、ギャグものとしては、懐かしいと
いうか、保守的な雰囲気。
良い意味では安定感があるが、悪い意味ではパターンが読めちゃうような感じで、ある程度は
毒のあるギャグや下ネタも盛り込まれているが、危険度は低いかな。
パロディが割と多く、単にセリフや動きを拝借するだけでなく、キャラ絵を元ネタに
寄せたりと、それなりにサービスしてくれている印象。
このパロディに関しては元ネタが有名作品やジャンプ系作品が多かったりで、ジャンプ系
作品が多いのは危険度回避のようにも見えてしまう。
この元ネタのチョイスも一長一短といった印象で、良く言えば判りやすいが、悪く言えば
マニア心をくすぐるような感じは弱いかなあ。
ギャグものであるが、全体を通して、しっかりしたストーリーがあり、桜 市子という一人の
少女の人間的成長譚になっている。
幸福エナジーにより、全てを持っている市子がただ一つ持っていないものが、人との
つながり。
更に回りの幸福エナジーを吸い取ってしまう特異体質により、回りの人間を不幸にして
しまうが、この辺は寓話の「ヤマアラシのジレンマ」に通じるものがあるような。まあ、あの
寓話の真のテーマは人間同士の距離感の問題なので、またちょっと違うけど。
自身の幸福を削っていくことで、次第につながりができるのは、結局は何かを「捨てる」
ことにより、何かを「得る」ということ。
そういう意味では貧乏神の紅葉の行動自体も、「奪い」に来たわけだが、逆に「与え」に来た
とも言えるのかな。
惜しいのは市子の元々の幸福エナジーの量が半端なく多いため、作中では捨てることによる
喪失感があまり感じられなかったことで、結局は市子が単に得しただけみたいに見えちゃう。
OPとED映像に象徴されるように、市子と紅葉をライバル的位置関係に置きたかったように
思われるが、市子のキャラとしてのパワーが強すぎて、紅葉の影が薄くなってしまったように
思えた。その他のキャラと較べても、ダントツで市子の印象が強い。
この市子のキャラとしての強さは、中の人である花澤 香菜さんの力も大きいみたい。
当初はほんわかとした癒し系の役が多かった彼女も、その後は演技の幅が広がったか、結構
エキセントリックな役も増えてきた感じだが、ここまで怒鳴りっぱなしの役というのもかなり
珍しいのでは?。
更に、市子というキャラは単に怒るだけでなく、よく泣くし、よく笑うしで、かなり
喜怒哀楽が激しい感じ。そういう意味では、この作品「花澤 香菜劇場」といった印象も
あった。