成人したおじさん さんの感想・評価
2.9
物語 : 1.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
思春期御用達アニメ
※13話すべてを視聴したうえでの感想になります。
タイトルが幾分鼓吹的なものになってしまい大変申し訳ありません。
私はもう成人をとうに過ぎたおじさんです。
ですのでアニメをよく視聴するボリュームゾーンからは、甚も離れた人間の感想であることを御容赦ください。
しかしながら、私自身本が大好きで、大学時代は海外文学を研究していたため、少なからず主人公とは近しい部分があるのではと感じています。
以下寸評。
・作画評価(★3.5)
ロトスコープのアニメはディズニー以来であったが、私を物語の戸口に連れてくるまでさほど時間はかからなかった。原作の作画を大望される方も多いようだが、私はこれはこれで大変良い決断をされたと思う。ただこの作品の問題点は、ロトスコープを「もっと評価してほしい」という思いから、必要以上に売り出してしまったことにあると考える。この手法は一般に「長回し」と言われ、アニメーション作品では高畑勲監督がよく使うアプローチ方法である。この技法は視聴者を芝居にくぎ付けることが出来る反面、誤魔化しが一切利かず、不用意に使うと受け手側を「退屈」というどん底に突き落とすことになる。この作品はまさに後者の失敗を招いてしまった。20分の尺にこの技法を使うことはあまりに困難で、この作品はそれを成し得なかった。DVD等幕無しで視聴する方が、このアニメの見方として最適なのかもしれない。
・声優評価(★4.0)
素晴らしいの一言に尽きる。この作品はこの声優陣らによって支えられていると言っても過言ではない。大変感服いたしました。一つ課題を挙げるならば、声優の技量差が大きく、そのムラによって見る側が疲弊してしまう点である。
・音楽評価(★4.0)
奇を衒い過ぎた様にも感じるOP・EDの楽曲だったが、この仕事によって視聴者は日常から瞬く間に引き剥がされ、アニメの世界観に引き摺り込まれることとなっただろう。本編の中にも、音響技術の拘りが光った部分が幾つも垣間見られ、この作品に於いて非の打ちどころのない働きをしたと言える。ただ最後に一つ付け加えるなら、作品に敷かれたレールが必ずしも正解であるとは限らないという点である。
・物語・キャラ・総評(★同1.5)
思春期の頃誰しもが、迷い苦しんだあの時期、自立出来ない自分を責め抜き、現実と葛藤したあの頃の思い。そんな時間を今リアルタイムで過ごしている人にはきっと聖書のような神々しさをこのアニメに感じることであろう。自らの不透明な日常に疑問を持ち、悩み過ごす日々を生きている時期には、きっと私も心底夢中になって見続けた作品であっただろうと感じる。しかし逆を糺せば、すでに思春期を過ごし、自立した人生を歩む方々には、大変理解不能なアニメに映るだろうと思う。その線引きが目に見える形ではっきり露見するのがこのアニメの特徴だと考えている。もし、時期を過ぎた方がこのアニメを視聴される場合は、今の自分とアニメを照らし合わせるのではなく、思春期の頃の不安定な気持ちで見てみると面白く感じてくるかもしれない。
ではこのアニメを低評価とした理由はどこにあるのか。その理由は大きく分けて二点ある。
【理由①】
この作品は新たな分野に挑戦し、アニメーションという垣根を見事に越えてきた。それによって文学性を持った今までにないアニメとして注目を浴びてきたのだ。しかしながら、その挑戦によって、否応なしに他文学作品と並べられ比較される立場に来てしまった。これが一つ目の低評価とした理由である。文学作品として視聴してしまうとどうしても底が浅く、物語性に乏しい作品であるように見えてしまう。これは私が文学により多く触れる機会があったからかもしれない。
【理由②】
低評価した二つ目の理由は、受け手側のボリュームゾーンにある思春期の学生を、歪めた日常に導いてしまう恐れがある点である。現にこの作品を見た学生がすでに何件か模倣犯として犯罪を犯してしまっている。これは、この作品が思春期の学生にとって如何に劇薬たるかを示している。ゲームの悪影響などとは次元が違う耽溺性がこの作品には存在していると感じる。私はこの点からもこの作品を高く評価することはできないのである。