くし さんの感想・評価
4.3
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
それがシュタインズゲートの選択なのだから…
シュタインズゲート本編は岡部が自責と戦いながらみんなを救うべく必死にあがく姿を観る事が出来たが、本作品は岡部を助けるべく牧瀬が葛藤する姿を描いた作品だ。そこには恋愛要素も涙を誘引する場面も多い。
この作品は本編の続きなので、必ず本編を視聴してから観るのが大前提です。また、このレビューはネタバレですので、素晴しい作品を体験する為にも未視聴の方はご注意ください。
{netabare}2010年夏、シュタインズゲート世界線に辿り着いてからは1年が経過した。
この世界はまゆりが死ぬ事もなくクリスが殺される事もなく、タイムマシンもDメールも存在しない世界。
いたって穏やかな日常なのだが、それは突如起こった。
岡部は突然、眩暈のような衝撃とともに別の世界線で経験した記憶がパラパラと見え隠れした。
岡部はタイムリープを何度も繰り返した事で、度々色々な世界線での記憶が頭の中でトラウマのように出現した。
牧瀬は岡部と居る時、デジャブを体験する。その情景を岡部に他の世界線で経験した事との関連を尋ねた。
デジャブとは記憶の時間的ズレが生じる物。
デジャブが別の世界線の出来事を言い当てた。
デジャブがリーディングシュタイナー(運命探知)の一種の可能性ではないかと思った。
岡部のリーディングシュタイナーは過去改変によって複数生じた記憶を持つ。
そんな中事件は起こった。岡部が目の前から消えたのだ。
岡部が消える、いや、岡部の存在した記憶が消える。ラボメンナンバー001は欠番。
そして岡部の記憶を牧瀬も忘れてしまうのだった。
何かが欠けている、何かが無くなってしまった。それが何なのかわからない。違和感。単なる妄想でないかという思いと頭がおかしくなってしまったという恐怖。思いださなければいけないという焦燥感と全て忘れて楽なってしまいたいという誘惑がぶつかり合う。
1週間が過ぎた頃ふとしたきっかけからその要因の糸口を思い出し、牧瀬もまた岡部がそうであったようにタイムリープを始める…。
ここまで来ると、この物語が牧瀬主役で進行していくのだと確信するのだが、本編の様に繰り返すループの話では無い。この作品は岡部が凄く魅力的でこのカッコ良さは誰もが岡部に深い感情を抱いてしまう。牧瀬は岡部が消える前の場面にタイムリープし、岡部にこれからの所存を話すのだが、岡部は牧瀬に
過去改変がうまく出来なかったらどうする
もう一度やる。うまくいくまで何度も過去へ戻り、何度何度も試す。
時間を戻す方法がある限り、人は必ずそうする、そうしてしまうんだ。
しかしそれは苦しみを増す事になるだけだ。誰かをすくえば、誰かを失う。
やっと叶えた思いを無かった事にし、ずっと願い続けた思いを根こそぎ奪い取り、
逃れられない現実に直面し続ける。何度も何度も…
全ての犠牲の責を負い、それでも繰り返さなければいけない苦しみが解るか
その中で心が摩耗し、人としての感情が無くなっていく恐ろしさが解るか
例え方法があっても、過去を改変してはならない。
未来は誰にも解らない物で、やり直しが効かないからこそ
あらゆる不幸や悲しみも、理不尽な事故も人は受入れ前進出来るんだ。
牧瀬は岡部の居ない世界を目の当たりにしている。まゆりと橋田と牧瀬の3人だけのラボを。誰も岡部の記憶の無い世界。岡部が消える。生きてきた証も意味も無い死ぬより残酷な世界。
岡部は言った自分の存在が消える事に「構わない」と。
「俺が消えても、みんなから俺の記憶が無くなっても、忘れろ。」と。
「まゆりは死なない、クリスは生きていける」岡部は自分を犠牲にしても大切な人を守りたい。私は改めて岡部の普段は隠している真の人間像を確認した。なんてカッコいいんだ。
牧瀬は自分がタイムリープして初めてタイムリープをし続けた岡部の孤独さ、辛さを理解した。全てまゆりや私のために。だからそんな岡部を消し去る事も忘れる事は許されないと強く感じた。
牧瀬はあがく。「岡部、岡部」牧瀬は叫ぶ。牧瀬にとって岡部は無くてはならない存在。「忘れることなど出来る訳が無い」「あなたをずっとずっと前から知っている。ずっと思っている。」「これからもずっと、ずっと…」
しかし、岡部は目の前から消えた…。{/netabare}
この作品、岡部の素なカッコ良さと、牧瀬の愛情にとても心を奪われ感動する。岡部の人間性を知っているから、岡部が真摯に向き合うみんなへの優しさを知っているから、岡部を愛しているから、この作品の随所で泣かずにはいられなくなる。そんな作品でした。
それがシュタインズゲートの選択なのだから…。