シェリー さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人の判断というものは曖昧で、、、
性能が高くほぼ人間と変わらないアンドロイドを扱った作品で新鮮かつ巧妙で自然と見入ってしまう映画でした。
なんといっても設定がとても上手だったと思います。
アンドロイドが普及し、仕事はもちろん家庭でも使用されるという流通ぶり。家事、洗濯、荷物持ちや忘れ物のお届けまで。
命令されたことは何でもこなす便利な道具として存在しているのです。
そんな中で国のお偉いさん方はアンドロイドが自発的に行動することを忌避します。
つまり、感情を持って命令されたこと以外のことをすることを何よりも恐れました。
法では完全に規制しきれない、現代でいうところの知的財産権のようなものでそういったアンドロイドを全て把握することは不可能ということです。
しかし、これに反旗を翻すかの如く存在しているのが今回の舞台、カフェ「イヴの時間」なのです。
都内の路地にないようである鉄の薄っぺらな扉を開け、少し階段をおりたところにある文字通り素敵なカフェです。
扉を開けると気持ちの良い音楽が流れてきます。
入ると最初に目につくのがお店のルールが書かれた看板「この店は人間とロボットを区別しません」と。
いささか差別認識の強い言葉であまり好きではありませんがつまりそういった趣旨。
ここでは普段ならばアンドロイドは人間と見分けが付くように「リング」というものを頭に浮かべているのですが
その必要はなくなりiPhoneのSiriのようなしゃべり方もやめ、人間と同じようにしてそこにいることができます。
僕はここに面白さが見受けられると思うのです。
人間である主人公たちにはもちろんそこいる「人」たちが人間であるのか、
それともアンドロイドであるのかは分かりませんが、なんとか判別することを試みます。
だけれども、もし尋ねた相手がもしアンドロイドだったら
相手の触れてはいけないことに踏み込んでしまったかのような罪悪感にも似た感情が湧き出てくるのです。
もし相手がアンドロイドであるのに人間と同じように接して良いのか
人間ならば失礼な態度がないようにしなければ!など、実にさまざまな葛藤がみられます。
こうしてアンドロイドに対する、人間に対する、さらには自分自身に対する価値観が揺さぶられ、形を崩していきます。
われわれ人間は多分に視覚情報に頼って生きています。テレビがこれだけ流行っているのを見ればそれは歴然としています。
しかし、それによる人間とアンドロイドの判別が効かなくなり見分けることが難しくなったときそれは恐怖と成りえるのでしょうか。
それとも理解への好機となるのでしょうか。
人というのは何が人を人としてささえているものなのか。
有機体である私たちだけが「人間」を名乗れるのでしょうか。
テーマを押し付けてくるような作品ではなかったのでとても見やすかったですし、自然と考えてしまうような映画です。
ラストに明かされることもあるのでしっかりと最後まで観て頂きたいです。