satan さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
モナドは当世の風刺
モナドは桎梏によるディストピアだが、それはこの現在の世界の風刺でしかないと思います。
存在に対する哲学です。内容は非常に高尚なんですが、簡潔ではないのでとっつきにくいかもしれません。
世界観はナウシカに似ている部分がありますが、ファンタジーではなく、あくまでもSFというカテゴリーに分類されるような作風です。
白昼夢のような不思議な描写もありますが、これはある種芸術的であるといえるのではないでしょうか。
観念や思想に対しては、「どうしてこうなったんだろ?」「これはどういう意味なんだろう?」と自問しながら見ると、より世界観に浸れるし、分かりやすくもあると思います。
少なくとも気晴らしに見るものではなく、本腰いれて能動的に見る作品です。例えるなら、小説を読むのではなく古典文学を読む感じですかね。
全体を通して感じたのは若干見にくいということです。これは物事が明晰に示されていないからだと思います。つまり具体的事象にたいして非常に抽象的表現をする場面が幾多にあるということです。その度に「どうやって?」「どのように?」なんて考えてたら訳が分からなくなります。だからあえてそこは考慮せずに、言葉を言葉のまま捉えるのがいいと思います。
個人的にはリルとピノの三人でモナド目指して旅しているあたりが一番楽しめました。あういう雰囲気は好きです。それってこの作品の本質と関係ないじゃんって言われればそうかもしれませんけど、まあ、主観です。
如上で夢現な表現が多いみたいなこと述べましたが、それはなんというかだまし絵みたいな感じです。何が本当で何が嘘なのか、その境界線を曖昧にするような表現。故にじっと見ていると気持ち悪くなってきます。疑惑と疑念が流れ込んできて精神分裂でも起きるんじゃないかという、そんな感じです。こういう作品作る人の頭の中って、ほんとどんな構造してるんだろうなー。
なにはともあれ見る価値はある作品です。
一般受けは……しないんだろうなー。