ハト さんの感想・評価
2.6
物語 : 1.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
ほのぼのSFかハードSFどっちつかずで尺不足。
価値観、文化、風俗、生活様式などがまったく違う、まさに異世界に住む人間同士の対立から共生までを描くSF海洋ロボットアニメ。
発達した文明や技術が消失し、ほとんど海洋になってしまった世界で、かつての技術を遺跡として発掘し生活しているという古典的なポスト・ホロコーストSFではありますが、数多の船を連結させた船団ガルガンティアの上で生活しているなどのこういう世界観や舞台はいつ見ても非常に魅力的であり、高揚心をくすぐられます。
登場する2つの世界のロボットも、王道的なロボットアニメのメカニックデザインとは少し違ったデザインになっています。いわゆる兵器っぽさはまったく感じられませんが、戦争がメインではないこの作品の作風とマッチしていますし、メインで登場するロボット、チェンバーには自立型AIがあり喋りますが、「ロボット」というよりは「キャラクター」として認識させるという部分でも見た目と合っていますね。
しかし世界観・舞台やガジェットは魅力的なのですが、1クール13話の作品なのでストーリー、キャラクターの心情表現、SF的説得力が稀薄になってしまっています。
SFというものは自分たちが住んでいる世界とはまったく違う世界の為、その世界の構造や設定、その世界の価値観の説明を話に入れながら視聴者に嘘だけどありそうと納得させることをしなければならないのものだと思っていますが、ガルガンティアは異世界が2つ登場するのでどうしても薄くなります。
●一部の例を挙げるとすれば、
ピニオン達が離れるお話。なぜ人の繋がりを大事にしてる人々が別れを決断したのか。
異世界SFで、さらにガルガンティアという船団がウリなのに、"大衆"をほとんど描かれない。そこに住んでいる人々がどんなことを考え、レドをどのように思っているのか、また意見の違いなどがほぼ描かれません。これではメインキャストの動きに合わせて都合よく動く舞台装置でしかありません。メインキャストは"大衆"の中の"個"として描くべきだと感じました。
またガルガンティアは展開が4つあります。
①ガルガンティアでの価値観の違いの展開。
②主人公レド側の世界の展開。
③ヒディアーズに纏わるマンアフターマン的ハードSF展開。
④ラストの展開(ネタバレ回避)
これらの話を1クールで全てやるにはどうしても駆け足になり、明らかな描写不足が起きていると感じます。
価値観の違いから始まるヒューマンドラマをほのぼのSFの中でやるのなら、心情表現に尺を使う。
ハードなSF展開になるなら、複線やSF設定の説得力が重要になると思います。背景や描写には複線はありましたが、普通の複線は無く、いきなりこうでした!と提示されても苦笑いです。やりたい話がとっちらかってしまって結局尺不足になった感が否めません。
2クールやそれ以上なら余裕を持ってしっかりできたと思いますし、いい作品になったかと思います。世界観や舞台は魅力的なだけに非常に勿体無いです。