雷撃隊 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
魔法少女の「仁義なき戦い」
「なのは」や「セーラームーン」が非牡丹博徒みたいな任侠路線の勧善懲悪ないし水戸黄門だとすればこちらは「仁義なき戦い」に近い方法論の実録路線だろう。先入観を逆手にとったアンチテーゼだ。ストーリーそのものは日曜の仮面ライダーなんかをチェックしていればある程度予想はついたのでさほど衝撃は無かった。しかしつまらないかと問われれば「超面白かった。」マスコットのQBの極悪エイリアンぶりが凄まじい。ゲーテのファウストをモチーフにしたシナリオも哲学的だ。人間に悪魔の契約を持ちかけるQBのモデルは恐らくメフィストフェレスだろう。世界を超越する存在になるまどかはファウストなのか?
油彩画のような劇団イヌカレーの魔女の結界もアートの世界で面白い。額縁に入れて飾りたいぐらいだ。
まどかやほむらたちの戦いは魔女やエイリアンとの戦いというより人間社会の不条理そのものとの戦いのようで社会人であればこそ冗談じゃないリアリズムを感じた。この魔法少女の世界ってサラリーマンの社会に似ている。友達みんなで同じ職場に就職したら友達ではいられなくなり出世競争の相手ないしドライな「職場の同僚」に変化してしまう感覚に似ている。憧れの「職場」の「厳しい現実」に打ちのめされてゆくまどかたちの心情は「初任給の喜びどこへやら」だろう。さながらQBさんは実利主義の企業経営者でありマックス・ウェーバーの定義する「理想的な官僚」だ。人間何処までいこうが不条理から逃げられないのだろうか。でもだからこそまどか、ほむら、さやか、マミ、杏子たちが等身大の人間として輝いており、愛おしく尊敬できる。萌えじゃなくて酒飲みながら人生語りあいたいと思わされた。新作映画では苦難を乗り越えて一回り大人になった彼女達に会いたいものである。でも上条恭介だけは許せん!!!この手でブチノメシたいと本気で思ってしまった。
ちなみに日本で1番有名なロボットのガンダムも最初は勧善懲悪の先入観を利用したアンチテーゼだった。魔法少女の世界にこの方法論を利用したのは「まどか」がはじめてなので草分け的な作品になるかも。