シェリー さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
人とアンドロイドのお話
なかなか好きな作品です。
絵も綺麗ですし、それに合わせて流れるジャズのメロディが
体を包み込み作品へと引き込んでいきました
セリフやカメラワークに無駄がなく、とっても楽しめました。
あの映像はここにしかないものでした。
合理性を掲げた高度資本主義社会の中で必然として生み出されてきた機械(アンドロイド)。
しかし、時の流れと技術革新により本来担い手であった人間を疎外していってしまう。
そこで当然人々は「権利」なるものを取り返そうとする。
人の勝手で生み出され、それにより壊されようとされるアンドロイドたち。
そこに新たに人造人間「ティマ」が現れる。中立的な立場として。
ティマは上に書いた仮想社会の問題点を具現化したような存在。
彼女はこの作品の中で周囲の人々から
「アンドロイド」と「人間」の両方の立場で扱われるのです。
彼女は初めに人間に会い、その見た目、他人から認められること、
意思の疎通ができることから自然に自分のことも彼と同じだと解釈します。
しかし、ある人たちからは自分のことはアンドロイドだと言われます。
そして彼女は人にもそして自分にも「わたしは誰なの?」と問い続けます。
人と寸分変わらない見た目をしたアンドロイドが
「人間」と同じように扱われるか、
それとも今までの通り「アンドロイド」のままなのか。
人は目の前に引かれた境界を跨ぎ、歩み寄ることができるのかということが
この「ティマ」を受け入れることひとつに集約されているのです。
この映画では答えは出されませんでした。
そこは非常に残念でしたが他の部分は、その過程などは良く描けていたと思います。
計算ミスをする電卓は「人間」ではない。
それはどこまで行ってもそれは機械である。
では人間を「人間」たらしめるものはいったいどこにあるのか?
そんなことを少し考えた作品でした。