STONE さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
素材が多すぎた料理、みたいな
原作小説は未読、更に大元のゲームの「マブラヴ オルタネイティヴ」も未プレイ。
1話、2話でBETAの進撃により、日本の西半分が壊滅するというインパクトのある
始まりを見せたが、ここでの人類の絶望感と、それでも戦っていこうとする篁 唯依の意志の
強さが目を引く。
BETAのモチーフネタはおそらく「スターシップ・トゥルーパーズ」のアラクニド辺りだと
思うが、人間を捕食対象として淡々と攻撃してくる様は、なまじ悪意や敵意を剥き出しにする
敵より怖い。
他種を捕食するという行為自体、自然界では多々あることだが、現代の人間社会では天敵と
呼べる他種はいない。しかし、こういった存在を本能的に恐れるがゆえに、余計に怖く
感じるのかなと思ったりもした。
前述の「スターシップ・トゥルーパーズ」を始め、定番のゾンビものや、最近の「進撃の
巨人」など、人間を捕食する存在がいる設定の作品は個人的には結構好きだったりします。
しかし、この作品自体は外伝的なものみたいで、対BETA戦は本筋ではない。この序盤の
ハードな世界観に魅せられた人は残念感を味わうことになりそう。
この作品は、アラスカのユーコン基地における「 XFJ計画」を中心に話が進められるが、
実際は登場キャラの人間関係や各国の思惑が中心に描かれて、肝心の戦術機開発そのものの
描写がほとんどない。
こういう部分は絵的には地味だし、扱いづらいとは思うが、それでもやりようによっては
(アニメじゃないけど)「プロジェクトX」みたいな盛り上げ方はできたんじゃないかな。
一応、中盤で不知火・弐型のお披露目みたいなシーンがあったが、開発描写がなかった
せいか、あまり達成感みたいなものを感じられなかった。
共通する敵がいると一枚岩になるような作品があったりするが、実際は過去のしがらみを
簡単に捨てられるわけもなく、更に問題解決していない段階で、その先を見据えて行動して
しまうなど、うまくまとまるものではない。現実からの例だと、人類共通の問題点である環境
問題などが、やはり各国の都合が優先されたりする。
BETAを前にしても、各国の思惑が先立つところなど、リアリティを感じられて、結構
好き。
後半は戦術機同士が戦う演習「ブルーフラッグ」を軸に、一種のスポーツもの的展開で話が
進んでいくが、「難民解放戦線」のテロにより、優勝?の行方はどこかに行ってしまった。
終盤で盛り上げようという演出なのかもしれないが、それまで蓄積していたものをひっくり
返すような展開は返って盛り下がるのでは?。
また、このテロ行為自体、実行側がテロ編になってから登場したキャラばかりで、いかにも
テロ用に用意しましたみたいな感じ。末端に癒し役的存在のナタリーが加わっていたりは
したが。
序盤から登場して、仲間だと思っていたキャラが、実は「難民解放戦線」でした、みたいな
展開だともっとインパクトはあったと思うけど。
この作品、全体的にイベント盛りすぎという印象なんだよなあ・・・。
キャラの多くは、良く言えば頑なな、悪く言えば頑固と言うか、意地っ張りなキャラが
多く、そんなキャラ達のぎくしゃくする人間関係が面白かった。キャラの物わかりが
良すぎるとドラマとしては面白くない。
しかし、このキャラ達の心情や関係性の変化は今一つピンとこなかった。
一応、「こういうことがあったから、こう変化しました」みたいなイベント自体は用意
されているが、そこでの感情の動きが不自然。
特に、反目していた唯依とユウヤ・ブリッジスが好意を抱くようになるくだりや、ユウヤを
憎んでさえいたレオン・クゼが、ユウヤと和解していくようなあたりは、「コロッと変わる
なあ」と思ってしまった。
中盤以降はラヴコメ色が強くなるが、他作品のようにキャラが中高生ならともかく、いい歳
した大人が子供のような恋愛をしている展開や、温泉での覗きに興じている様はどうも
違和感がある。
別に大人キャラによるシリアス作品にラヴコメ要素が不要と言っているわけではなく、
キャラが大人なら大人なりのラヴコメ展開があるんじゃないかと。
スケジュールがきつかったせいかもしれないが、中盤の作画がひどくて、人物画の崩れ方
などはギャグとしか思えないような部分もあった。
全体的には、「あれもやろう、これもやろう」と欲張りすぎて、全てが中途半端になってしまった
感じで、世界観自体は悪くなかっただけに、なんとも勿体ない印象。