ゆりえ命 さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
男の子を好きになった余裕のない女の子の心理がリアルすぎ 引きこもりのあなたも観るだけでリア充を越える!
湯浅比呂美は言葉数少なく、少し憂いのある、心惹かれる良い女。この涼しげな美人、優等生の比呂美が、時折覗かせる、男への執着と、どろっとした女の性が見所のひとつ。それでも仕上がりがさわやかなのだから、見せ方が非常にうまい。
さて、本当は解説なんて無粋なこと。でも「すげー」と思ったハイライトはどうしても推したくなる。
まず第五回。
眞一郎が、比呂美の部屋を初めて訪れるシーン。
比呂美は一瞬驚くけれど、初めて自分の部屋を訪れてくれた眞一郎が、どんな話をするのか、胸のときめきを抑え平静を装う。
このシチュエーションに、竹内マリアの invitation で描かれた女の子の胸の高まりを思い起こした。invitationでは女の子が男の子の部屋に初めて招かれて入った胸の高まりが、true tearsでは、逆に好きな男の子を自分のテリトリーに招き入れたときの女の子の特別な感情の描写が見事だ。
比呂美は女の子のプライベートな領域、彼女の内側に踏み込むことを許し、それゆえ、眞一郎が二人だけの話題を切り出し、突然のなにげない会話が特別な経験になることを期待する。比呂美にとって、それはロマンチックな記憶として残るはずだった。
しかし、切り出されたのは、別の男との恋愛の手引きという、思いつく限り最悪の話。比呂美は淡い夢を打ち砕いた無神経な眞一郎をなじって言い放つ。
「おせっかいな男の子ってバカみたい」
同時に心が叫び声を上げる。
「そんなことを言うためにこの部屋に入ったの」
眞一郎が何も理解していない様子を見て取り、どうにもならない諦めと落胆がないまぜになる中、比呂美は、わからない相手に対して、言っても仕方がないことは口にしない。まだ何も知らない子供をたしなめるような言い方を選び、静かにこの場の幕を引く。それは比呂美が最も言いたくなかった言葉だっただろう。
「おばさんに知られたら、たいへんよ」
この畳み掛けるような三連続の比呂美の言葉に完全に打ち抜かれますた。このとき、「このシナリオは男では書けない、絶対女が書いている」と思い、とっさに脚本を見たら岡田麿里でした。
最終回では、好きな男の子を自分に繋ぎ止めておくための、女の必死の駆け引きが描かれる。
比呂美は眞一郎をどうしても逃がしたくない、ここで引き止めることができなければ彼は永遠に自分から離れていってしまうかもしれない。不安で不安で仕方がない。
彼女が余裕のない頭をフル回転させて思いついた方法。それは眞一郎を誘って自分を抱かせてしまうこと。恋敵に先手を打ち、自らの身体を武器に、繋ぎ止めてしまうことを画策する。
彼女はここでも一見冷静にことを運んでいるように見えるが、実は思い詰めて、とても普通とは言えない心理状態なのだ。
彼女が計画的に事を運んでいるのは、朝、登校直後から「今日帰りに家に寄って」と誘っていることからもわかる。おそらく自分のコーヒーカップを割ってしまったというのも嘘で、予めわざと壊して使えないようにしておいたのだろう。一つのカップから飲むというシチュエーションを作り、鈍い眞一郎を少しでもその気にさせるよう小細工したのだろう。処女の比呂美が自らの身体を手段に使うことを思いつくことで、女の性の激しさが描かれる。
これが失敗に終わり、他にすべがなくなったとき、本音がストレートに口を突いて出てしまう。
「嫌いにならないで」
かわいい。打ち抜かれてしまう。女のずるさもあくどさも愛情の裏返しで、ここまでやられると、いとおしい。(岡田麿里とは恋愛したくないものだ。)
「彼女は私です」と宣言したり、強気の発言(実は、自分を鼓舞する行為)も散見された比呂美だが、それでも彼女は自分が選ばれるという絶対の自信を持つことができなかった。
比呂美と乃絵の陰に隠れて、脇に回ってしまったが、愛ちゃんからは自己主張をしないと自分の恋愛を失うということを学んだ。
今年の夏、ぼくは北アルプスを越えて、比呂美と乃絵に会いにいく。