らしたー さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
やさしい世界の、残酷な風
良いお話だと思います。
開始5分で想像がつく結末を、あえてそのまま最後まで描く、というのは、
原作があることとはいえ、なかなか気持ちのいい態度のように思えた。
同時に、このクオリティの短編をぽんぽんっと描けちゃうのが
緑川先生のすごいところなんだろうなあ、とも。
が、自分はどうしても本作の溢れんばかりの情緒性を拒絶してしまう。
受け入れ可能な情緒性レベルが閾値を超えてしまったことによる、
一種のアレルギー反応みたいなものが出てしまった。
破瓜期の娘さんが寝る前に布団の中で考えていそうな物語、と言うと
高い評価が並ぶ中でえらい恐縮なんだけれども、感想としてはまずその辺になってしまう。
6歳の時の主人公の台詞回しが、嫌な感じに大人びているのも引いてしまった。
友人帳はよくてもこれはダメだった。
やはり女の子視点なのが合わなかったのだろうか。
あるいはニャンコ先生の不在か。単純にそれが大きいのかもしれない。
もう少し長い作品であれば感想もまた変わってきたのだろうと思う。
ただ、さすがだなあと思うシーンがあって。
{netabare}
主人公に好意を寄せているらしき少年と手をつないで登校する、あの場面。
一見、いい感じの雰囲気なのに、少年の声はフェードアウトしていき…。
主人公の頭の中は、手をつなぐことができないギンへの想いだけ。
ギンにあいたい、彼にふれたい、と。
{/netabare}
あの、見ようによってはひどく残酷な描写。
ウェットでやさしい世界に吹く、一陣の乾いた風。
直前の、{netabare}ご飯が喉を通らない、{/netabare}という描写からの一連の流れには正直舌を巻いた。
あの繊細さは、男性作家では生涯到達できない地点じゃないだろうか。