雷撃隊 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
前半横溝正史 後半森村誠一
1期2期まとめての感想。残酷マンガとしてやたらと話題だったが、自分は初めて見た時は日本で1番有名なあの探偵が出てきそうだと思った。閉鎖的な田舎や対立する旧家、祟り、民間伝承、まさに「金田一さん、事件です」と叫びたくなる(笑)。尤も作者本人もモデルは「八つ墓村」だと公言してるのでやっぱりだった。
登場人物が死んだり生き返ったりするが、これは原作ゲームのバッドエンドまで映像化しているからだ。普通アドベンチャーゲームが原作の場合、シナリオを一本道に再構築するが、全部の伏線を回収するには効果的だった。1期は最初の殺人が起きてから事件そのものの核心に迫る部分が少ないためあくまで発端でしかない。2期に入ってからが推理ものとしての本領発揮だ。オカルト的な事件に科学的なメスを入れるミステリーの世界に突入。でもこのカタルシスを味わうためには1期のホラー的な表現が必要不可欠だろう。4クールで1作と考えた方がしっくりくる。
表の主人公が圭一なら裏の主人公は梨花だろう。彼女のタイムループ脱出作戦になってしまうのは驚いた。しかも過去に死んだ記憶を辿って真実を突き止める強引な展開は推理ものとして反則だ。さらに本物の神様である羽入まで登場。まあ彼女は事件そのもののロジックには関わらないのでギリギリセーフかも。
犯人が判明した後は横溝正史的な作風から森村誠一的な作風へ。5話かけて語られる犯人の視点のエピソードは自分的傑作だ。ミステリーにおける「答えあわせ」だ。戦時中から続く医療研究やら政治家の派閥闘争やら入江診療所や関係者の意外な経歴など見ていて飽きない。この時点で全部の伏線が回収され、1本に収束していく。だが、残念なことに事件の辻褄は合うが、ここでもミステリーのルールは破られている。政治家や権力者や自衛隊や警察が犯人の場合、視聴者、読者には初めから判る状態でないといけない。その理由はどんな荒唐無稽なトリックでも強引な力技で成立させてしまうからだ。被害者の死亡推定時刻と最後の目撃時刻が合わない、なんてトリックも自衛隊の工作で犯人も自衛官ではどんな無茶でも納得せざるを得ない。まあ同人ソフトだから許されるルール破りだろうけど。
最終的に登場人物全員の心が1つになり、事件解決にむけて奔走する爽快感はこれまでの鬱な展開と真逆で気持ちがいい。最終回で無事「秋」を迎えて「夏」からの脱出を果たした梨花と圭一たちに「おめでとう」といいたくなった。同時に1つの事件の顛末を見届けられて大満足。良質の推理ものなのでもっと多くの人に見て欲しい。
「ひぐらし」好きな人にお勧めな映画、ドラマを紹介します。
「八つ墓村」
祟り伝説の残る山村で猟奇連続殺人が発生。お馴染みの探偵金田一耕助が事件を推理。古谷一行版が良質のミステリーでお勧め。渥美清版は有名だが原作クラッシャーなのでややNG。
「悪魔の手毬唄」
金田一シリーズの1篇。
不気味な民間伝承が残る山村でまたまた猟奇殺人が発生。金田一さんが推理します。対立する旧家や未解決事件の解明に執念を燃やす警部など、「ひぐらし」と共通点多し。石坂浩二版が一押し。石坂金田一と若山富三郎演じる磯川警部のコンビが大石、赤坂コンビを連想させます。
「野生の証明」
森村誠一原作の社会派ミステリー。自衛隊のある部隊の非合法活動と大物政治家の癒着を知った主人公。自衛隊の実験場と化した村から脱出を図るが・・・。高倉健主演の映画版がお勧め。1つの村が自衛隊の実験場だったり、予知能力をもつ少女が登場したり、「ひぐらし」最終シナリオと共通点多し。