らしたー さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
見知らぬ町を想うやさしさ
原作が好きで、ずっと観たかった作品。
いいよねえ、肩の力の抜け方が。
家族、友だち、恋愛、地域社会。その描き方の温度が心地よい。
軽くなく、嫌味がなく、くどくもない(※くどいのは演出くらい。)。
いい塩梅に肩の力が抜けている妙作である。
EDはここ数年で五指に入る素晴らしい仕上がり。
日常系として、喫茶店という「拠点」があるのも強い。
拠点があるから、安心して逸脱できる。
突拍子もない方向に日常を逸脱しちゃっても、喫茶店に戻ってくるだけですべてを取り戻す。
いちばん好きなのは、亀井堂の賢者の贈り物のお話。
あの皮肉の利き方はすごいなあと。
**
歩鳥がつぶやく。
「ふだん見えないところにも、人は暮らしてんだねー」
これにハッとするのである。
電車の中から見える、行ったこともない町の暮らしを想像する、あの感覚。
自分の知らない町にも、家庭があり、お店があり、学校があり、生活がある。
そして、自分の住む町を、ほかの誰かが同じように見ている、という事実。
当たり前のことなのに、不思議な感覚でもある。
この作品の世界観をささえているものも、それかなって。
見たことのない世界に思いを馳せ、行くことのない町の暮らしを肯定する、
やさしい想像力に満ちている。
傑作です。