ヒロトシ さんの感想・評価
3.5
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
家族というテーマを舐めきった作品
『家族』というテーマは身近だからこそ描くのが難しい。
各人によって家族とは様々な形を持つ。ある人はそれこそ嫌悪の塊だろうし、自分にとって何にも代え難い宝物だという人もいる。家族に対する捉え方は千差万別であり、だからこそ家族をテーマにする作品は所詮フィクションという事を踏まえて、リアルさを適度に抑えつつ、その作品における家族の在り方を描こうとしていくのが普通だと思う。
この作品が失敗したのは、程度を考えず、リアル感を作品の中に組み込んでしまった事で、そこを考えていれば、ハートフルラブコメディな作品としてそこそこ成功はしていたはずだ。3人の姪っ子はキャラはちゃんと立っているし、主人公との関係も観ていて微笑ましいレベルになっている。性格も、ご都合主義で形成されたものではなく、それなりにバックボーンがあることを示しているので、見ていて納得できる感はある。そういう意味ではいい加減に作っているわけではないのは明らかだ。
それだけに家族を維持していくという点で、リアルさを前面に押し出したのはマズかった。 {netabare}両親が死んだ事で親戚一同に歯向かうような形で三姉妹と同居する学生が、養っていく為にバイトを掛け持ちし、過酷な労働に追われる日々。{/netabare}
そもそもここが間違っている。
家族になる大変さというのは『経済観念』だけがクローズアップされる問題なのか?もっと他にクローズアップされるべき点が色々あるんじゃないか?リアルさを押し出して作品に箔つけるなら、そこをまず徹底しろ!と言いたくなってくる。
よく比較される『うさぎドロップ』はダイキチが子育ての面で甘く見ていた事に苦渋を舐めるシーンがあるが、経済的な面もそうだし、性別の違い、子供への接し方、人が人を一人前に育てていく事の大変さを多角的な面から描いている。ダイキチがりんに対して真っ向からぶつかっていく姿に視聴者は共感を覚え、作品としては成功の部類に至った。
パパ聞きに関して言えば、祐太がまずやる事は、三姉妹に対して自分が今後どう接していくかのプランを考える事、とにかく彼女達と過ごす時間を大切にしていかなければならなかったことだったはずだ。それを度外視して、養っていくにはどうすればいいのか?とにかく金だ!という発想が安易すぎる。
原作を読んでいないので、アニメと原作では多少設定が違うのかもしれないが、とにかく制作陣が追求した家族を構成することの難しさをリアルに描いた結果が『経済観念』のみという事実は失笑ものである事は間違いない。学生がちょっと背伸びして制作した作品を見ているような感覚に陥った。
変にリアルさを醸しださなければ、ご都合主義な面や荒唐無稽な展開も大して気にならなかったかもしれない。それだけにこの点のみが悉く残念だった。