景禎 さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
3期はあるのでしょうか? 京アニにはその気がないようなので、残念です。
谷川流さんの同名のライトノベルが原作の作品です。「消失」は涼宮ハルヒシリーズの4巻にあたります。時系列的には、アニメ2期の最終話(1期では9話)の「サムデイイン ザレイン」の直後のお話です。
この作品を視聴するためには、アニメ2期を視聴しておくことが望ましいです。最低でも、2期1~6話「涼宮ハルヒの憂鬱」と2期8話「笹の葉ラプソディ」を見ておかないと、なんのことだかわかりません。
3時間近い上映時間で、アニメ映画としてはかなり長めです。でも、その長さを感じさせない超高密度の内容です。アニメ作品としても、登場人物のちょっとした仕草、人物の心象を投影するような背景の動き、等々、テレビシリーズと比較しても、格段に丁寧に作られています。
この作品は、涼宮ハルヒのホニャララというタイトルですが、実質のヒロインは長門有希です。それも、{netabare}普段の宇宙人ではなく、人間としての長門有希です。なので、普段の無機質な無口キャラとしての長門有希が好みの方は、ちょっと抵抗があるかもですね。が、しかし、逆に新しい魅力を発見できるかもしれません。
長門以外も、未来人の朝比奈みくる、超能力者の古泉一樹、さらには、世界を破壊する能力をも秘めている涼宮ハルヒも、フツウの高校生として登場します。このあたり、彼女ら、彼らの違った人物像が描かれるというワケです。そこの部分が、この作品の最大の見所の一つです。
{/netabare}
日常シーンや会話シーンが多く、アニメとしての絵的におもしろい箇所はあまりありませんが、それでも、見た後の充足感というか、満足感というかが半端ではなく、さすが京アニ!!といったところ。
1期、2期のテレビ版でも、本編BGMにクラシック音楽が使われることが多かったですが、「消失」では全編にわたってフランスの作曲家エリック・サティのジムノペティ1番、2番が使われています。1番は比較的有名な曲なので、どこかで聴いたことがある、と思う人は多いでしょう。しかし、2番を知っている人はほとんどいないのでは?
この作品にはジムノペティ第2番が、オリジナルのピアノ版と、今回新たに編曲されたと思われるオーケストラ版が使われます。{netabare}長門が世界を改変するところのバックは、このオーケストラ版です。{/netabare}
1番と3番はドビュッシーによってオーケストラ版の編曲が出ていますが、2番については「これをオケ版に編曲して演奏したら世界がひっくり返る」という、サティ本人によるジンクスがあったらしく、ドビュッシーも躊躇したと言います。それを「消失」ではやってのけたのですが、{netabare}その場面がちょうど世界改変の場面であるというところは興味深いですね。{/netabare}
見て思ったのですが、やはり「消失」はテレビアニメとしては無理があったのかもしれませんね。序盤の、改変が起こる前後の日常の描写とか、けっこう長くて、テレビ版だと2回分ぐらいありそうです。それをやると、けっこう退屈になってしまったかもしれません。まあ当然、映画化には興行的な目算もあったとは思いますが・・・。
{netabare}
最後の部分で、キョンが朝倉涼子に刺される場面で、薄れゆく意識の中で、未来から来た自分を見るシーンがあります。タイムトラベルものに目がない私としては、そのシーンが気になって気になって、ついに続きを知りたくて原作を全巻買って読破してしまいました。それも3回も・・・。
{/netabare}
ということで、この後の展開が気になります。3期はあるのでしょうか? 京アニにはその気がないようなので、残念です。