じょー さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
リン・ミンメイの悲哀と喜び
遺跡で朝を迎え、髪と服を整える早瀬未沙の仕草の意味が分かったとき、僕は大人になりました。
マクロスシリーズのベストテンを作り、この作品に対する思いが結構大きい事に気付かされ、書き始めました。自分の人生において、天空の城ラピュタに次いで、再生回数の多い作品です。
時代背景ですが、この年のアニメを象徴するのが「風の谷のナウシカ」です。ガンダムではZの前年にあたります。他の方もコメントされていましたが、後付けで2031年の映画という設定がなされています。TVが2008年の史実。”主役リン・ミンメイ”というキャッチからも、劇中劇を臭わせていました。作画監督、美樹本晴彦、板野一郎、原画筆頭に庵野、メカに出渕裕、音楽に羽田健太郎という贅沢な時代です。
TV版とは異なるストーリーで、ミンメイのキャラクターは、けなげな女性。未沙はずるさを持つ、大人の女性という位置付けです。正ヒロインは、TV版とは異なり美化されたミンメイと言ってよいかと。TV版のストーリーをはしょりながら進めて行きますので、ストーリーに若干無理があったりしますが、そこはご愛敬。
まず作画ですが、これは手書きのアニメとしては当時、最高傑作といっても過言ではない出来かと。ナウシカと比較しても遜色ありません。板野サーカスの弾道、ヴァルキリーの動き、どれをとっても素晴らしいです。本作ではスーパーに代わり、ストライクヴァルキリーが用いられていますが、重厚かつ美しく洗練された機体です。歴代でも、YF-19イサム機、VF25Sオズマ機、VF-0フェニックス、ロイ・フォッカー機に並ぶ四天王と個人的に思ってます。
そして何より圧巻は、ラスト直前8分間の、リンミンメイによる主題歌に乗せての突撃シーン。戦闘シーン、セリフ、そして歌の全てが、アニメ史上に残る名シーンです。直前に輝の気持ちを確認した心の動き、それを感じさせない、明るい歌声。ブリタイの演説「リン・ミンメイの歌を聴く全ての者に告げる、、」に対して、歌手としての喜びを爆発させる美しい笑顔。そして、輝と未沙のフラッシュに重ねられる、ミンメイの「もうひとりぼっちじゃない」のフレーズ。ここでの心情は直接的に表現されていないのに、ミンメイの悲哀と喜びが伝わって来るようでした。ラストシーンには、成功を収めたミンメイの「天使の絵の具」で希望と未来を示します。
TV版でステーキを食べ損ねた柿崎は、ここでもあまりにあっけない死に方をします。「柿崎ぃぃぃぃ」柿崎について語り出すとレビュー一つ書けてしまうので、ここらへんで。
とにかく、当時のアニメの中では必見の作品だと思います。フロンティアを見てマクロスシリーズに興味をもたれた方、是非ご試聴を。マクロスFの見方が変わり「ヤック・デカルチャー」と叫びたくなること請け合いです。「涙がとまりませんよ」