2S-305 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
際立つ美しい作画・・・・でもファンタジーはいりません。
輸入BDにて視聴、原作ゲーム未プレイ。
「CLANNAD」の続編、主人公「朋也」と本作のメインヒロインである「渚」が相思相愛になってからのお話となります。
作画の美しさに更に磨きをかけ、エピソードも「渚&汐」エピソードに絞られて進められていきます。
前作で感じた「渚」の演出に感じた違和感が、口調はさほど変わらないにも関わらずゆっくりとした流れる時間を感じさせるような落ち着いた演出により払拭されており、素直に感情移入ができました。
高校卒業までのエピソードは割と淡々と描かれており、最初「学園もの」で終わると思っていたのでちょっと驚きました。
卒業後、朋也はいわゆる世間の荒波にもまれていきながらも少しづつ「懸命に生きる」ことに意義を感じ始めてきた矢先、反発心から疎遠となっていた父親の犯した事件によりせっかくの栄転が台無しになります。
最早親子関係修復は不可能と思えるほど憤る朋也、それを傍らから見守る渚・・・。
そんな中で朋也と渚は結婚を決意し、秋生のささやかな抵抗にあいながらも晴れて結婚することとなります。
恋愛もので結婚後のお話まで続くってのは割と少ないですが、本作ではここからが本番でした。
感動ストーリーものでヒロインが病弱であるからには、その先に待っているエピソードは一つのわけで、幸せな日々は永遠ではなく、ヒロイン渚は朋也との子を出産する際に非業の死を迎えることとなります。
この物語ではその後、渚の死をのりこえて、ではなく「のりこえることができない」主人公像から描かれています。
渚を失ったのち、空虚な日々を過ごす主人公が、5年間渚の両親に預け疎遠にしていた実の娘「汐」と渚の母の計らいで小旅行を行う過程で、朋也の父方の祖母との邂逅により父親が自らと同じような境遇の中、すべてを賭して育て上げた事実を今更ながら実感し、父に対する愛情がようやくよみがえるとともに、娘に対する愛情が芽生えることになります。
ここでようやく主人公に一つの成長を見ることができ、育ててくれた父親とようやく和解し、娘と共に生きていく道を選ぶこととなり、つつましいながらも暖かい日々を積み重ねていきます。
正直なところ、愛妻を失ってショックなのはわかりますが、忘れ形見の「汐」を5年間ほったらかし、というのはそのあとの伏線とはいえあまりに酷すぎ、少々説得力にかけるものがあるようには感じましたが、単なる恋愛エピソードだけではなく、親に対する率直な感謝の気持ちであったり、子を思う親の心情についてつまびらかに描かれており、情感豊かな美しい作画もあいまって何とも言えない感銘を受けました。
と、ここで終わっていれば個人的には名作だと思ったのですが・・・・・。
そう簡単には終わらないとばかりに、伏線はりまくりのファンタジー設定が顔を覗かせます。
その後愛娘汐が渚同様謎の病気に罹患し、雪の降る夜に親子ともども行き倒れ、非業の死を迎えたかと思いきや、まさかの超展開人生やり直しフラグ発生、渚も生き返り親子3人大団円、でもなんか謎が残ります、的なクライマックスが待っておりました。
古い少女漫画で一条ゆかりの「砂の城」という漫画があるのですが、「ナタリー非業の死かと思いきや生きてました!」・・・と思ったらそんな都合のいいことにはなりません、夢落ちでした、という何とも言いようのないラストがあり、最初は酷い終わり方だと思いましたが今では秀逸なエンディングだったと思っています。
何が言いたいかというと・・・・「人生を語るストーリーでやり直しがきいちゃダメだろ!」
変えていくのは自らの努力や行いに基づく未来であるはずで、少なくとも「渚」の死は、悲しいことではありますが、断じて「間違ったこと」であったり「過ち」ではなかったはずです。過去の事象に遡って「特定個人の生き死にのみ」改変されるというのはいくらなんでも・・・。
元々幼少時に失われたはずの渚の命が、一度奇跡により助かったはずなのに更にもう一回とは・・・。
地方公共団体・市町村レベルとリンクしている「幻想世界」・・・ご当地ヒーローならぬご当地ファンタジーってところでしょうか。
できれば可能性を示唆するぐらいのラストにとどめておいてほしかったですね。
父親への感謝や娘に対する無条件の愛情を描いたエピソードがどうも絵空事じみて薄くなってしまった感は否めません。
実際のところこんなご都合主義のしょっぱいファンタジーであるなら、本作で人間模様を描くうえで「ファンタジー」要素は全く必要なかったのではないかと思います。
番外編の杏ストーリーはなかなか良かったので、それぞれオムニバス形式でもよかったかもしれませんね。
ということで、個人的評価としては名作改め良作どまりです。