konR さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
雨の匂いのする人生の分岐点
単純に綺麗な作画を期待して観てみたんですが、予想以上に新海ワールドに飲み込まれてしまいました。
{netabare}
前も何度も新海さんの作品を見ていましたが、人生の中で出てくる答えのハッキリ出しづらい分岐点だったり、うまくお互いの気持ちが通じ合えず、すれ違いが起きたりだったりと、「自分の思うように行かないけれど、それでも世界はそれなり回っている」というような、そんな切なくも誰しも必ず通って行くような、悪く言えば「ありふれた」世界の1ページがこの作品にもあります。
靴職人になろうと志を持ちそれに向かって努力しようとする高校生男子と、自分の道そのものを思わぬ形で失いかけた27歳の女性がこの作品のメインでしたが、お互い形の違う秘密(悩み)を持ち、それでいてその秘密を隠したままの空間で時には話し合い、時には依存して、お互い暗黙の了解のように逢うことが出来る「雨」の日を待ち望む毎日。
そんな二人を象徴する「雨」。これが今回の映画のやはりメインの要素だと 全編通して感じさせられます。作中でも様々なメタファーがあり、雨という物を降り続く社会的な圧迫という名の雨だったり、単純に先の見えぬ未来への不安という名の雨だったり、それでいて、マイナスの要素だけではなく、雨の上がった瞬間に見える綺麗な景色という素晴らしい点もある雨。
ストーリーの中で同じ背景が多いこの作品の中で雨という物の暗喩が上手く場面展開の手助けをしていたと思います。
そして、この作品の素晴らしかった点はやはりその雨の描写でした。切り替わりや、カットインで入ってくる雨を含んだ風景が、写実的に綺麗なだけでなく、その風景にまるで雨の「匂い」を感じさせるようなそんな描写が多数あり、思わず息を呑んでしまうほどでした。「綺麗」という域を超えて「生きている」とまで感じさせてくれます。
{/netabare}
46分という短い時間の映画ですが、何とも言えない清々しさを自分に与えてくれました。映画の上映はまだ始まったばかりですので(6/1現在)観れるなら、劇場で見た方が、この作品の良さを感じることが出来ると思います。