ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価
3.6
物語 : 2.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
なんかブレイクし過ぎで怖い…
戦車+女の子という良くわからない取り合わせ
ニッチなニーズしかないマイナーアニメだろうと思っていたのに
気が付いたら大ブレイクしていました
確かに戦闘シーンはかなり気合入った作りになっていて
本格的な戦車戦を期待しているような層も満足させる出来栄えでした
くわえて、武骨な従来の戦車戦のイメージからかけ離れたかわいい女の子たちのおかげで
ミリオタ向けだと敬遠してしまうようなライト層も惹き付けたのでしょうね
しかし個人的にはだいぶ首をかしげたくなる内容でした
気になったのは以下の二点
一つ目は女の子の描写
1クール+αの構成でやるには女の子が多すぎました
こういうのをAKB方式っていうんですかね
個々のクオリティを犠牲にしてでも
とにかく女の子をたくさん出しておけば
どれか一人くらいは好みの子が見つかるだろう
というクリエイターの矜持はどこへ行ったのかと嘆きたくなる暴挙です
そんな中でもメインのあんこうチームのメンツだけは
ある程度時間をかけて描写しようという意思を感じましたが
キャラを掘り下げるためのエピソードがあまりにもお粗末
なにか壁にぶつかったり問題が発生するところまでは他のアニメと大差ないですが
それを乗り越えるために何かするような描写がほとんどなくて
気が付いたら壁の方が避けてくれちゃう人生イージーモード
どうも釈然としません
また、打ち負かしたライバル校の女の子達はみんな
気持ち悪いくらいに主人公たちに好意的
戦闘を通じてみほとチームメイトとの絆が深まっていく
というのは理解できるのですが
なぜ敵にまであんなに好かれるのかは疑問です
なにか戦闘を通じて友情が芽生えたような描写になってますが
戦闘中に特にそれを誘発させるような行動や会話があったわけでもなく
普通に戦って普通に勝っただけでみんな仲良し♪
唐突というか強引というか…ほんと気持ち悪い
あんな風に戦車で撃ち合ってるだけで仲良くなれるなら
他の高校同志も仲がいいはずですけど
そういう感じでもないのはなぜでしょう?
もう一つは戦闘シーンに関して
安全に配慮された部活動という割には
やけに火力は高いし操縦も荒っぽい
これで負傷者が出ないわけがありません
本当に安全に配慮してスポーツとして戦車道の試合をするなら
弾はペイント弾で十分だし
戦車から身を乗り出すような危険な行為は
ペナルティの対象としておくはずです
終盤になるとその不自然さは一層顕著になります
装甲の厚い戦車は装甲の薄い戦車の脆弱性を暗に示唆していますし
高速走行からの大破は戦車に縁遠い層にもイメージしやすい
交通事故やモータースポーツの持つ危険性を思い起こさせます
これで安全な競技なわけがないですよね
でも誰も死人が出ないどころか傷一つ負いません
命に係わる怪我をしていてもおかしくないのに
「やられちゃいました~(悲)」で済んでしまうあたり
もうほとんどギャグアニメ状態です
これはひどい
不満を感じたポイントが
女の子の描写と戦車戦の描写という
どちらもアニメの中核の部分だったので
各所で手放しに絶賛されていることには
どうも違和感をぬぐえませんでした
しかし、これらのポイントは制作上の失敗点ではなく
意図的に仕組まれた演出なのかもしれません
人生の障害を乗り越える際の苦悩や努力
戦車戦で打ち負かされた側の怨嗟や羨望
戦闘の結果当然生まれる負傷や死
共通しているのはマイナスのイメージを生むものを
きれいに省いているというか誤魔化していることですね
アザゼルさんに始まりBLOOD-CにAnotherと
残酷な描写や精神的に追い詰められる描写を多用してきた水島監督
それが自身初のオリジナルアニメーションで
得意描写と親和性の高い戦車というものを題材にしながら
敢えてそれらを排除してきてきたわけです
それがないことに違和感を植え付けるところまで
織り込み済みだったのかもしれません
マイナスのイメージを生むものは隠してしまい
観ていて気持ちのいい部分だけを提示するというのは
大戦時の日本軍や北朝鮮の戦意高揚プロパガンダとまったく一緒ですね
軍歌をイメージさせる行軍曲を繰り返し流してくるあたりも似ています
私が本能的に気持ち悪いと感じたのは
この巧妙な(?)印象操作に対してだったんですね
このアニメのおかしな部分が何も気にならず
最後まで楽しく見終わったという人は
ひょっとするともう既に洗脳されてしまっているのかもしれません…