メルヘン◆エッヘン さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 3.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
消えるヒロイン。メンバーの存在感。全編つらぬくハルヒへの渇望感。メタ構造が生みだす面白さ。作り手側に完全に脱帽です。よくぞ、と。
■高度なメタフィクションと広義のミステリー要素がクロスオーバーしました。
誤解を恐れずにいえば{netabare}、別の世界、パラレルな世界にハルヒは「誘拐」されます。相対的なポジション設定からいえば、誘拐されてない従来の世界との関係は対等です。だけれども、従来世界のキョンの存在はそこにあるからこそ、固定視点となり彼はまさに彼にとっての「理不尽」な状況を打破しようとあがきます。{/netabare}
蛇足な話。ネタバレではなく物語導入構造:{netabare}
「消失」はミステリー構造では失踪、誘拐、行方不明などという要素と絡めて考えるとクラシックです。それそのもに、新味は少しもありません。だからといって、その視点でくさす気は毛頭ありません{/netabare}
逆にシンプルでうまい設定、導入だったと思いますし、まさか、美少女が登場するアニメをベースにして「この導入と展開」には驚かされました。
開示されてない謎、その存在に気がついた時、無理矢理にでもそれを知ろうとし、解決を求めるキョン君、彼はミステリーでいえば、典型的な「探偵役」として機能します。
既存作以上に、彼は観る側の優秀なナビゲーターとして動いていきます。いままでの説明要員から格上げされた立場を作品の中で持たされます。(補足しておくと、キョン君は常に中間総括しつづけ、ひとり語りがやむことがない助手でした。また観る側のミスリードを誘います。だけれども、それも悔しくない)
全体に、魅力的に思えたストーリー性は、ハルヒが消え、結果としてサブキャラクターの登場時間が増えることで面白さを増大させます。{netabare}特に長門の役回りが{/netabare}キーとなり、本作の面白さのひとつとなっています。
表現でいえば、これは高度なメタフィクションです。語らずして語る。見えないものを見せる。誰にでもできない語りであり、手を抜かず丁寧に作品を作り出した制作者たち全体の成果であると考えます。※原作由来なのでしょう。
■メタフィクション層で覆われることで、名作のひとつに昇華した
ハルヒ全体シリーズにいえることで恐縮です。そもそも、SOS団は平凡なサークルです。非日常との「あきらかな接点」はありません。同時に、世界を壊し兼ねない「あやうい関係性」は常在します。
これは多くの方が誤解しやすい点ではないかと思います(逆の意見をお持ちでも構いません)。活動もごくごく普通。接点がありそうでないのが緊張であり、それをやわらげ愉快にしてくれるのが、ナレーターのキョン君であり、結果としての周りとの活動になります。ここはわたしは分別して考えたいと思っています。賛同する人がいる、いないにかかわらずです。
この従前の状況にメタフィクションとしての層が全体を覆います。それが、SF(少し不思議でない本格的なという敬意をこめて)としても成熟した作品性を生み出します。そこではじめて非日常すらこえた世界が広がることによる快感をわたしは覚えるのです。
さもなくば、単なる、超絶美少女の傍若無人なわがまま活動記録。身も蓋もありません。もちろん、ハルヒの傍若無人さだけでも十分おもしろい作品になったでしょう。(それはまた、このレビューでいえば、パラレル世界のメタな可能性です)
決して、そうならず、作品世界を別次元で俯瞰できる立場と能力のある長門有希なり、谷口の動きがキーとなり、彼らの人間関係、ハルヒを絶対的な中核とする作品世界が緊迫感と共にわたしたちに迫ってきたように思います。同時に、本作への謎への希求が切実な思いとして成立します。
涼宮ハルヒシリーズの面白さは、そういうメタフィクションとしての構造の面白さを忘れることはできないと、めずらしく確信をもって、位置づけたいのです。
■終わりに
筋をおうともろにネタバレですよね。基本的に順番さえ抑えておけば、だいじょうぶみたいです。いまからでもゆっくりどうぞ。時間の長さだけは考慮事項です。
運良く、順をおい、ハルヒシリーズをおいかけてよかった。順番を間違えてしまうと楽しめなかったかもしれません。
作画クォリティは申し分ありません。背景も手を抜くことなく作り込まれています。好みでした。
やられました。長大な時間を忘れてしまいます。それだけこの作品が優れているということでしょうか。
あらすじをたどるのは好みではないし、すでに多くの方が優れたレビューを書かれているので、自分なりを総括的にレビューしました。
音楽は覚えてないので中立です。
とはいえ、魅力的なハルヒ、長門に素直に萌えてるかもしれません。(^0^;) 正直な告白で終わります。