メルヘン◆エッヘン さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 3.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
[改稿]届かないもどかしさ。全編いらいらのはがゆさ。作り手側に翻弄されているとわかっていても、止まらない。なんてこったい。
なんてこったい。です。
とくに何がいいのといわれると、何もないんです。でも、すらばしい。ずっと流れが気になり続けるのです。主人公爽子の言動のひとつひとつに、胸がしめつけられるのです。それがすべて。気持ちはすれ違っていないのに、行動がすれ違う。なんじゃー、それ。
本質的な悪人も登場しないのもいいところだ。善人の集合だから、結果として残酷なシーンもある。善意が必ずしも……。そして、それが作品世界も含めて私たちの現実。
自信をもってお薦めできる良品。わたし中では間違いない大傑作。
■キャラクター設定の妙、物語の作り方の妙
鑑賞後原作を読んでみて基本的に原作がいいのはわかった。なぜだかはまり込んだ。
特記するような派手さは一切ない。
突出したキャラクターも存在しない。
唐突さを感じさせる展開もない。
そういう作品だ。
常套手段のライバル(いうなれば、胡桃沢梅)がいないわけではない。だけれども、それで?! だ。このストーリーを際立たせる存在であるだけだ。本質的に悪いのひともいない。トラブルめいた事件は発生するが日常の範囲内である。
超展開もない。だから、納得できる。共感できる。リアルに感じ取れるのだ。
ところで、
▲ふつう、あんなにさわやかな少年、風早君なんて嫌みに感じてしまう可能性もあるのだけれども、彼は違う。きっと男性でも惚れてしまう。
▲陰鬱なみたての爽子というネーミングはいい意味での作者の嫌らしさだ。あだ名の貞子との対比で、彼女のポジションを明確にしているからこそ、彼女のけなげさ、純真さに心を打たれるのだ。
▲あやね、千鶴両名もいい。爽子をささえ、ある意味彼女からも支えられる。気持ちの良い関係性がそこにはある。
▲野球少年、真田君の抱える悩みの設定もうまい。これはかわいそうすぎる。悲惨すぎる。
▲そして、北海道の札幌の北あたりかと思うのだが、舞台がいい。実際に仕事で何度も訪れたあたりが舞台だと思うので、個人的にリアリティを感じた。それもこの作品への自分の評価に繋がっている気がする。
と、5点。破綻することなく、静かに空気が流れていく。
■ちいさなすれ違い、タイミングのずれ、すべてが歯がゆい。
これは、人間関係の相互性が中核にある、まさにはがゆい恋愛の話。少年期から青年期に向けて、かわりはじめる精神。その成熟。そして、いらいらするほどの、ちいさなすれ違いに、頭を抱えながら見続けた。(全編停止なしで (^0^;))
ここまで述べたような基本要素を映像化で損なうことなくアニメ化できていると思う。こればがうまく出てこないのは残念だ。実直にいおう。すばらしいという言葉にかえて、なんどわたしは泣いたことだろう、と。わたしは、目の周りが赤くなってしまった。どこかにある恋模様、誰にもあるさまざまな思いだ。
※2期もじゃっかん含めて。ちなみに、笑えるっていう意見もあるようですね。ほんと?!