かせーたす さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
至極の青春群像劇
あまりアニメ自体にハマらなかった自分が「アニメって良いなあ」と心底惚れ込んだ作品です。
カテゴリー分けしてしまうと「学園・青春・部活」的なジャンルだと思うんですが、それぞれの要素がやんわりと絡む日常を描いた群像劇という感じでしょうか。
そんなストーリーを、見事なまでの背景の作画や声優たちの演技、そして心に残る歌や曲の数々がしっかりと支えています。
背景の作画は本当に美しく細かいところまで描きこまれており、没入感を支えています。
歌に関してもテーマである「合唱」の為、歌の上手い声優さんがキャスティングされたと聞きましたが、それぞれ個性的ながらもぶつかり合うことなくハーモニーを奏でていました。イベントでのライブでの生声での歌唱ですら恐るべきハイレベルで歌っているのを聞いて、やはり歌唱部分に妥協はないなと改めて思い知ったほどです。
出演声優さんの歌ではないですが、OP主題歌も非常にキャッチーで明るく爽やかな良い曲です。
私自身がアニメにハマれなかった一つの理由として、「狙っている感」と言うのか、何だか露骨であったりいかにもアニメファンに対して媚びるような言動やリアクションを見て醒めてしまうというのがありました。
「TARI TARI」は匙加減が見事で、友人同士・家族同士といったそれぞれの関係性が非常にリアル(現実離れしていない)です。友人どうし仲は良い、でも常時一緒って訳でもなくそれぞれの生活があって、お互い何もかもを打ち明ける仲でもない。家族は家族で思春期にありがちな「近くて遠い」関係性が書かれているんです。
テーマである合唱との向き合い方も同じで、とても大事な物だけど、何もかもを捨ててそれに賭ける訳でもない。
現実の部活だってそうじゃないですか?「プロや飯の種として大成する為にやっていこうってほど賭けている訳でもない(太一や和奏は本気かもしれない)けど、一生懸命取り組んではいる。」という感覚。そんなバランス感覚で自然に日常やキャラクターを描いているのが魅力だと思います。学園モノほど学校ばっかりでもなく、青春モノのような色恋沙汰は本当に霞める程度にしかなく、部活モノといってもそれぞれの部活以外の生活や将来への不安も覗かせるという描写が個人的にはリアルに感じました。
そんなリアルさがあるからこそ、それぞれのキャラクターに存在感を感じて感情移入がしやすい。それ故に劇中の様々なシーンに心を揺さぶられるんだろうなと思いました。
本当に掛け値なしに良い作品だと私は断言できます。2期があるのならぜひ見たいですね。