ツキ さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
奇人と天才
夢と恋愛を描いた直球ド真ん中の青春ラブコメ。ラノベ発の青春全開作品は案外久々な気がしました。もしかしたらとらドラ!以来かな?
最近の恋愛モノは作中での時間経過も少なく一つの季節、短い期間での恋愛模様を描くものが多い気がしたので春夏秋冬、季節ごとに様々なイベントを起こし一年間を通して物語が進行するのは懐かしい感覚でした。2クールあるとキャラの成長過程なんかも丁寧に描きやすいし「色々あったけど大切な青春の1ページ」っていうのが伝わりやすかったですね。私物化卒業式で不評だった一話もそれらを振り返させる意味では個人的には全然アリ。
ただ夢と恋愛をテーマにしつつも描き方がかなりお粗末。主人公が、やりたいことを見つけ努力し支えられ、時には挫折を経験しながらも前を向いていくみたいな構図は分かり易いですが過程が雑すぎます。
特に気になったのは空太の何となく始めました☆(ゝω・)vブイッ!!感が強いゲーム製作において製品化できなかった事に落胆し膝から崩れ落ちるところ。「メンタルwww」とか思って流石に感情移入は無理です。一年足らずでそこまでいったら単純に凄いと思うしぶっちゃけ才能もあると思うんですよね。挫折のハードル低すぎます。私の周りには天才と思える人は一人もいないんで分かりませんが、天才と認めるましろにキレてるシーンも割と謎。自分の物差しで測れないのが天才なんだよとか思ってるので自分と比較してキレるなんて言語道断。こう考えてしまうのは私が歳くってきたせいでもあると思いますがw
また、恋愛描写に関してもパッとしない印象。純粋な存在のましろが人に影響を与えたり、徹底的に心理描写がなかったりするのはキャラ設定としては作り込まれてると思いますが恋愛モノとしては向いてない。このキャラだと駆け引きが少なすぎるからなんかドキドキ感が全然ないです。
こうなるとどんっっだけ頑張っても明らかに日の目を見ない青山さんが道化すぎて泣けてきます。夢を追うために崖っぷちに立たされたり恋に悩んだりで好感持ちやすかったのに「天才」の前にはなす術もなくコールド負け。努力の人間が天才にフルボッコとか作中のテーマ的にかなり問題ありかとw
仁さん&美咲ペアはかなり良かったんですけどね。一度は脚光を浴びるも挫折を経験、それでも夢と信念を持って自分と好きな人の為に行動する…。キャラとして筋が通ってるし恋愛要素とも上手く絡んでると思います。個人的には絶対仁さんの方が主人公らしいしこっちメインのストーリーを見たかったですね。
私はどの分野においても努力の上で天才は生まれると思いたかったので本作が天才の一言で色々片付けてるのは納得いかなかったのですが、小説家の三島由紀夫さんが小学生の時に書いたという作文を読んだ時に持論は崩れました。スポーツなら兎もかく文学においては絶対的に先天的な天才がいるんだなと。なのでましろの裏付けのない天才キャラには厭々ながらも納得することにしました。
そんな三島由紀夫さんの11才の時の作文、いちよ貼っておきます。
{netabare}
「我が国旗」
徳川時代の末、波静かなる瀬戸内海、或は江戸の隅田川など、あらゆる船の帆には白地に朱の円がゑがかれて居た。
朝日を背にすれば、いよよ美しく、夕日に照りはえ尊く見えた。それは鹿児島の大大名、天下に聞えた
島津斉彬が外国の国旗と間違へぬ様にと案出したもので、是が我が国旗、日の丸の始まりである。
模様は至極簡単であるが、非常な威厳と尊さがひらめいて居る。之ぞ日出づる国の国旗にふさはしいではないか。
それから時代は変り、将軍は大政奉くわんして、明治の御代となつた。
明治三年、天皇は、この旗を国旗とお定めになつた。そして人々は、これを日の丸と呼んで居る。
からりと晴れた大空に、高くのぼつた太陽。それが日の丸である。 {/netabare}