dauteen さんの感想・評価

4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態：観終わった

頭から離れない・・・

話題になっているなと思っていましたが、とてもよかったと思います。
身近にあらわれる小さな謎を解き明かす話とざっくりとらえていたので、なんだか平凡で退屈してしまいそうとはじめは思いましたが、そんなことはありませんでした。
人間の裏に潜むもの、人の感情、人との関係といったものが描かれていて、私好みでした。思った以上に内容が濃い。何度も見直したくなります。
キャラクターでは、女性の方だとえるのキャラが少し鬱陶しかったり、やかましく感じるかもしれませんが、それはご愛嬌かと。
私個人としては、ふくちゃんがいちばん気に入っています。奉太郎と正反対の、青春を謳歌している明るくて人当りがよく、快活でしかも物知りな勝ち組人種のまさに輝く高校生！かと思いきや、
自身の程度、価値、実力というものを痛いほどに理解してしまっている人でした。
あの年で自分を悟ってしまっているのは、あまりに不憫でなりませんでした…。
ですが、彼の気持ちが痛いほどわかるのです。自分は、充実したふりをしているけれど、結局は「持っていない」人間。だけど、傍にいる奉太郎は「持っている」人間で、なのに自分の価値を自覚もせず、否定する。ふくちゃんの心情を思うと、何とも言えない気持ちになりました。
私がネガティブな人間なので、ふくちゃんにここまで親近感を覚えたのかもしれません。友人には「ふくちゃん暗いよね」とバッサリ切られてしまいました。
しかし、ふくちゃんは氷菓を代表するとても素晴らしいキャラクターだと思います。
ふくちゃんのことばかりになってしまいましたが、その他でも全体を通して文句なしではないかと思います。
特に印象に残っているのは「連邦は晴れているか」のお話です。私まで何だか、小木先生の「ヘリが好きでなあ…」の言葉が離れなくなってしまいました。その言葉に秘められていた思い、背景を知ったときの気持ちは何とも言葉に出来ません。
もうひとつ、最終話でのえるをみて、彼女が生まれた家や土地に縛られていることを感じて寂しい気持ちになりました。えるはそれに対して、文句や不満を示していないので、余計に です。「わたしは、ここで生きていく」えるの覚悟を、背負っているものを、知ったように思います。
ポップで明るい印象とは裏腹に、とても切なく、深く、心に来るもののある作品だと思います。氷菓でこんなにも切ない気持ちになるのは、もしかして私だけなのでしょうか 笑
とにもかくにも、おすすめです！