りたそ さんの感想・評価
4.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
だからこそ、この世は美しい
公開当時からかなり気になっていた作品です。
アニメを見ていたりするとよく流れていたんですよねー、この『アシュラ』のCMが。
劇場には行けなかったので最近までずっと忘れてたんですが、
ふと思い出しまして。
ワクテカしながら見たらめっちゃ面白かったです。
原作は1970年に描かれた漫画です。
私が生まれる前ですね。
原作を読んだことはありませんが、問題作として有名なので名前だけは知っていました。
と言うのも、
人肉を食べるという過激な描写が問題で、発売禁止にまでなったのです。
あ、でも、カニバリズムとかそういうわけではなく、
飢餓により限界状態に陥った人々が、仕方なくというか、そうせざるを得なくてとった行動です。
これは…
完全にりどが喜んで食いつきそうな作品ではないですか(^ω^)!
まず初端から切なくて胸が痛むような展開に目が釘付けになります。
なんかもう動悸がヤバかったです。
苦しい時代に生まれたものの母親には愛され大切にされたアシュラ。
しかし飢餓が母親を襲います。
空腹に耐えられず理性を失った母親はついにアシュラを食べようと火にかけてしまいます。
幸運にも(?)助かったアシュラは、
自らも人を食らいながら、ひとり獣のように生きてゆくのです。
人肉を食べるという行為に関してですが、
アンデス山脈での飛行機墜落事故で実際にそういった事例があったことが有名ですよね。
これを題材にした映画『生きてこそ』も以前見ましたが、
こういった環境でのこういった行為に関しては、
本当に肯定も否定もできないですよね。
生き抜くために人を食べるか、
人であり続けるために餓死を選ぶか、
どちらが正しいのか、
どちらが人らしいのかなんて、
誰にも判断できないでしょう。
アシュラのことを獣ではなく人として扱った若狭という女性は「もう人を殺してはいけない」と言っていたが、
阿修羅に「南無阿弥陀仏」を教えた法師は、
人を食べるなだとか人を殺すなだとかそういったことは一言も言わなかった(ような気がする)。
言っていたのはただ「人として生きろ」とかそんなニュアンスのことだけ。
人として生きるって一体なんだろうか。
そもそも動物と人間の違いって?
作中では「人間には感情や理性、心がある」というようなことが語られていたけど、
この映画に限らずこういった話題ではよく言われることだと思うけど、
どうして動物にはそれがないって思っているの?
誰かがそれを証明したの?
わたしにはちょっとよくわからない。
だから正直、
動物を殺して食べることは許されているのに人間を食べることは禁忌とされているということに関しては、
あんまり納得できていなかったりする。
でもきっと動物か人間かとかそういうことが問題なんじゃない。
命あるものを殺さなければ生きていけないという生き物の性、
そういった行為を罪として背負い、命をいただくことに感謝をしながら、必死に生きようとあがく。
「だからこそ、この世は美しい」のです。
仏教の教えは大切にするべきだなぁホントに。
「いただきます」と「ごちそうさまでした」
みんなちゃんと言おうね。
というわけで、
わたしが最近見た作品の中では(最近あんまり見てないし、最近見た作品はけっこうどれも面白かったんだけど、それでも)、群を抜いて面白かったです。
そもそもわたしがこういう問題提起作品好きってこともありますが。
ちなみにこれフルCGアニメーションなんですが、
以前見た『ベクシル』のような変な気持ち悪さというか不自然さとかそういうものもなく、
普通のアニメ映画のように気持ちよく見れました。
しかもアシュラが動く動く。
それでいて映像もキレイでした。
とても良かったです。
これはなかなかみんなにオススメできる良い作品。
「生まれてこない方が良かった」
「こんな苦しいところに生みやがって」
と、アシュラが叫ぶシーンがとても印象的でしたが、
現在の時代、そしてこの日本という国に生まれた我々は幸せだ。
そう実感せざるを得ない作品でした。
それにしても、
「人でなし」という言葉がこれほどまでに心にずーんと重くのしかかってくる言葉だなんて、
この映画をもってしてでなければ感じられないことだね。
なかなか過激な描写も多い作品です。
年齢指定がないことに関して少しびっくりもしましたが、たぶん子供にも見て欲しいという願いが込められているんだなと思いました。
眼を、そむけるな。