しゅんこう さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
これからアキラを見ようと思う若い人たちに(旧レビュー書き直し)
「SOLだ。SOLを使え・・・」
そろそろ過去の恥ずかしいレビューも書き直したくなりました。
これからちらほら書き直すことがあるかもです。
時代ともに読み手も変わるということで、できれば未視聴の若い方向けにレビュー書き始めの恥ずかしい私の記憶とともに、何か残せればと思いまして。
以下は最初に書いた私のレビューです。
日本のアニメの高い技術を世界に知らしめた作品。
今見てもそのクオリティは色あせない。
手描きセルの高い作画力を存分に味わえる。
人間の手はここまでできるかと驚いた。
音楽も山城組が担当、今でもテレビでたまに使われている。
いったいこの映画、何年先を行っていたんだ?
消しても良かったんですが、新しいレビューと比較してみると楽しめると思い、残すことにしました。
こちらが新レビューです。
興味ある方向けです。長いのでゆっくり読んでください。
{netabare}
最初に総括として伝えたいことを書いておきます。
このアニメは若い人たちが見てもそれほど感じるものはあまりないかもしれません。キャラのデザインは古いし、現代アニメのようなかわいい女の子も出てきません。大体みんなおかっぱ頭ですし、セリフも「やっとモーターのコイルがあったまってきたところだぜ」「お前もボスになったんだろう?この瓦礫の山でよう?」とか昭和の不良みたいでダサいです(私にとっては名言なんですが・・・)。今となっては時代性を考慮して見るべきアニメでしょう。
特にアニメ初心者がいきなり見るようなものではないのは言うまでもないですが、世界的には知名度は攻殻機動隊と共にとても高い作品なので、アーカイブとしてアニメの勉強をしたい、などという時に見るといいアニメです。アニメオタクを公言する外国の人と交流するなら見ておかないといけないくらいです。もう度忘れしてますが、大友監督は確か外国で勲章もらってるはずです。今の若きサムライたちが海外で活躍する遥か前に日本人として偉業を達成しているのです。本当に驚愕ですね。
時代性のことを少し書くと、当時のアニメは今のような大人も楽しむ娯楽というよりは、まだまだ子どものものでした。有名な手塚治虫さんの作品でさえ最初は子どもたちをターゲットにしなければならないくらいに、漫画やアニメは子どものもの、というイメージがありました。
大人向けのテーマを扱った作品は青年誌で連載されていまでも有名な作品がたくさんありますが、過激な表現を含んだ青年漫画、SF漫画作品の多くはいわゆるサブカルチャーの扱いから抜け出すことが出来ず、色物扱いで見られることもしばしば。アニメ化なんて尚の事高いハードルが。
そんな中、大友克洋漫画原作のこの作品がアニメ化されました。
大友克洋以降、以前と評されるくらい、漫画表現全体に大きな影響を与えた作品です。昭和・平成にまたがって完結した物語で、原作はアニメとはまた違ったストーリーになっていますので(原作途中でアニメ化されてます)興味が出た方は是非両方見るといいです。手塚先生も「私にもそれくらい描ける」といって賞の審査員を辞退したという逸話はあまりにも有名ですね。いろんな意味で当時の最先端でした。
アニメとしても相当な力の入れようで、80年代当時としては破格の10億くらいの制作費(広告費など合わせるともっと。最終的には12億くらいだったかな)がかけられています。日本中のクリエイターが結集して作ってますからね。もうオールスターですよ。確かにやりすぎですが、手描きセルアニメとしてはもうこれ以上の作品は過去にも未来にもないでしょう。まさにぬるぬる動くアニメです。押井監督の「人狼」も手描きセル作品としてかなりハイクオリティなので、セルアニメに興味が出た方はこちらもお勧めです。海外のクリエイターさんがこの作品を観て押井監督にどんなCGソフトを使ってるの?と聞いたところ、いやほぼ使ってないよ?まじか!となった逸話があるほどです。
話を元に戻しますが、この映画が公開されて、世界的にも国内でも反響を呼び、アニメ作品が次第に方向性を変え、大人の娯楽として認知され始める大きな流れを作ったといえるくらい歴史の起点になった作品です。
現代っ子たちがこの作画を見てどう感じるかちょっと知りたいところではあります。昭和のおっさんたちはこのアニメの作画が1つの基準、到達点になっているくらいです。私もすっかり魅了されてしまい、設定資料や絵コンテ集など集めたくらいです。デジタルアニメと手描きセルアニメは違うので一概には比べられないのですが、アニメとしてできることをとことん追求した作品です。人間の手は最高のツールなんだと思ってしまいました。
そんなこんなでこれから3DCGの分野が人間の手にどれだけ近づけるかを楽しみにアニメを見るのが私の趣味みたいになっています。セルルック技術とか今大友さんが見たらどう感じているんでしょうかね。日本の2D+3DCGの世界はこれから楽しみな分野です。
アキラ風に日本のアニメにいろいろな思いを込めてレビューの最後を締めたいと思います。
「もう、始まっているんだよ」
余談と蛇足なんですが・・・
SF作品で超能力を今では当たり前に扱うようになっていますが、物体を浮かせるサイキックの表現を描いた元祖が大友さんだといわれています。アキラの元になった「童夢」という漫画作品です。必要な人は読んでサブカルの知識を深めてください。
楽しんで読んで頂けたら幸いです。
長文読んで頂きありがとうございました。
{/netabare}