メルヘン◆エッヘン さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
キリトの意識が〝この世界〟に戻ってきた。[SAO編限定レビュー]
キリトの意識がこの世界に戻ってきた。
筋肉が衰えやせこけた彼が病室でひとり覚醒する。
VR装置を外し病室から廊下に。そこに見えるのは廊下のむこうにある陽光だ。
その光が差し込む方向に向けてゆっくりと彼は歩を進めていく。すこしづつだが確実に。危なげないがひたむきに。
キリトはその廊下の向こうに何を見ているのだろう。
この世界に戻ってこれた実感を確かめたかったのだろうか。むろん、SAO世界で別れたアスナのことであることは想像に難くない。光の中にアスナを感じているのだろう。――そこで、嗚咽していた自分がいた。
どこかで観たようなシーンとはいえ、この印象深いみごとなエンディングでSAO編は閉じられる。
文句なしにSAO編にわたしの心は揺さぶられたのだ。
納得いかない点{netabare} 最強の女剣士ヒロイン、アスナがデレてくる。徐々にふつうの女の子に変化していく。それは構わない。非常時には「?」って唸ってしまう場面もあった。どこかおかしくないかと。それはいい。{/netabare}守られるべき、あるいは守るべき立場という構図を表わすためには仕方なかったことなのだろう。
話は戻る。SAO編の締め方、ここまではよかった。自分の中ではここで終わってくれればという思いもあった中で、結局全編見通した。
結論的にいえば、やはり前半の完成度の高さは特筆ものだ。
VRとS&Sが融合する作品が増加するのは時代の流れなのだろうが、後編があったことでかえって消化不良的な思いが残ったかもしれない。伏線回収という問題ではない。乱暴な展開、後付けしすぎ、といったほうが適切だろうか。
もちろんそれはわたしの主観なのだけれど、裏を返せばおもしろい作品ほどそういう思いは生まれるものだ。(そしてそれを食い尽くそうとするのが今の商業資本であることも経済原理。ここ社会人としては大事)
■さらに、蛇足です。{netabare}
いずれにせよ、キリトは圧倒的に強すぎる。ちょっとそこまでの作中バランスでいいのかってぐらいで心配。ゲームであれば、バランス悪すぎじゃないかと懸念も。内省的で思索的な面も感じ取れる言動のキリトが、戦いの中で一直線で、最強で、ほぼ正の面しか持たなかったのは、キャラクター作りとしては物足りない思いもありました。好みでないといってもいいかも。
一種の異世界での冒険物語として読むか、作中芽生えた恋の話として読むか、複合させるか、別の軸を見つけるか/感じるか、それらは観る側の特権ですから、「最強」主人公というのもありなのかもしれませんね。{/netabare}