ヒロトシ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
あまちゃんとおはなちゃん
DVD待ちだったのだけれど、仕事が急にキャンセルになった事もあり、時間を持て余し、このチャンスとビックウェーブに乗るしかねえ!って事で鑑賞。
今、NHKの朝の連続テレビ小説で『あまちゃん』というのがやっている。勿論あまちゃんの方が後発だが、花咲くいろはとテーマが似通ってる所があり、それと重ね合わせてついつい映画を観てしまった。『あまちゃん』も『北三陸の女』という誇りの元に三世代に渡る女性の物語がクドカンの持ち味でもある軽快な旋律で描かれている作品だ。結構面白いので、未見の人には是非オススメしたいドラマ。
『花咲くいろは HOME SWEET HOME』はテレビ版では触れきれなかった皐月の過去やスイとの葛藤を軸にして展開される。母親と地元に反発していく姿がテレビ版より克明に描写されているおり、所謂みんちと菜子と結名といった御花世代の話の割合が若干少なかった感は否めないが、ファンとしては求めていた方向性ではあるので、そこは素直に評価したい。
{netabare}皐月と御花とスイの三世代に渡る四十万の女の物語の中でも、スイと皐月は、娘が母と同じ轍を踏まいと決意するも、路線が違うだけで目的地がいつの間にか一緒になっていたとするのが面白い。スイは板前の男と恋に落ち、自分達の城を手に入れ、後に夫が亡くなっても、その場所を城主として守り続けてきた。そこには自分が手に入れた物を簡単に手放したくなかった想いもあるはずだ。しかし何かを守るという事は、また何かを手放さなければならないことと同義、それが次第に皐月へのスイに対する反抗心の礎になっていき、『父さんの亡霊にしがみ付いて、それで必死になってバカみたい!』という捨て台詞に繋がっていく。しかし、スイみたいになるまいと思っていた皐月も時を経て、結局は愛した人の亡霊に捕まってしまう。過去と現在が交錯する中で、二人の四十万の女が、かつて辿り、苦しみながらも見つけた生き方を御花は一体どう受け止めるのだろうか。{/netabare}僅か1時間弱の作品ながら、テレビ版のキャッチコピーである『私、輝きたいんです!』という信念は捨てていない。過去を教訓に、これからの人生に対しての自分の姿勢を改めて問いかける。映画版のキャッチコピー『輝きたい人に送る人生の応援歌』というのは伊達ではないことは、本作を見た人の共通した意見になるのではないかなと思うぐらい、岡田女史の脚本は光っていた。そして美術監督の東地さんの渾身の背景画も本作品の美しさに一役買っていた。彼が追求する光の演出は映画の大スクリーンで見ると、また違った迫力を観客に見せてくれる。DVD待ちの人も多いと思うが、機会があるならば、劇場に足を運んで頂き、生で迫力や美しさを体感して欲しい。
まだまだ人間としても仲居としても『あまちゃん』な御花。
彼女が一人前になった時、新世代の四十万の女はどういう生き方を選択するのだろうか。それを想像しながら本作を鑑賞するのも、また一興だ。