らしたー さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
演出に冴えを見せるサイコサスペンス
どうもお話自体は[シビュラシステム:犯罪係数:ドミネーター:]という設定ばかりが先行して、それらが支配する世界に説得力を持たせる努力にかける印象がある。
挙げるとキリがないのだけれど、たとえば鎖国、技術先進国家ならば100%取らない選択肢であるはずなのに、唯一の法治国家を維持するためだかなんだか知らんがこのお話の日本は鎖国しちゃってる。じゃあアメリカは北斗の拳状態なのかよ、ていう。くわえて厚生省公安局の規模感とかもまったく描写がなく刑事課一係てのがどの程度の末端なのかさっぱり伝わらないし。
要はあんまり緻密な世界観を期待しちゃいけないというかメンドクサイことは忘れましょうてなずいぶん都合の良い舞台立てな作品。どちらかというとテーマ性で勝負している作品と思う。シビュラシステムが支配する社会(視聴者には明確にディストピアと映る)と、それに対する登場人物たちそれぞれのスタンスによる綱引き。
途中からは標本事件に端を発する一連の猟奇殺人を追いかける刑事たちの姿が物語の本筋となっていくわけだが、上手いなと思ったのはマキシマの人物描写。
{netabare}当初は自ら手を汚さない周旋屋としての立ち位置を印象として与えつつも、物語のギアが一段階上がる第一クールのラストで公安局の人間を前に明確な現行犯を披露する。それまではフワッとしていたマキシマが厚みを持った悪として描き直されると同時に、シビュラシステムが限界を露呈することで、視聴者の関心をディストピアの根源へと一気にシフトさせることに成功している。なかなか計算された構成だと思う。{/netabare}
ちなみに演出面にすごく光るものがある。シーンの繋ぎ方や何気ないカット、EDへの入り方などにいかにもノイタミナ枠らしいスタイリッシュなこだわりを感じさせる。お話はイマイチうわっ滑りなところがあるので、演出に冴えのあるハードボイルド寄りのサイコサスペンス、という見方が一番良いのかもしれない。
どうでもいいけど片手で持てるほど軽いのかドミネーター。