STONE さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
釣りを通じて、育む友情
以前、「けいおん!」のレビューで似たようなことを書きましたが、自分は釣りを、それも
この作品と同じルアーフィッシング(あとフライも)を趣味にしているので、この作品に関して
評価が甘めになっちゃっていると思います。
釣りを軸にした男子の友情ものと、地球の存亡を掛けたSFものと、一見まったく相容れる
ことのない要素がうまく融合した作品で、当初の予想を上回る面白さを見せてくれた。
友情とSF的要素が主要なために、あくまで釣り自体はスパイス的なものだと思って
いたら、これが意外と丁寧に描かれていた。
第1話でタックル説明、第2話でノット(ラインの結び方)、第3話でキャスティング(ルアーの
投げ方)、・・・といった感じで、アニメ版ルアーフィッシング入門みたいな感あり。
他人とのコミュニケーションの取り方の下手なユキを始め、宇宙人ゆえに地球人の感性が
理解できないハル、母の死を機に家庭に問題を抱える夏樹、組織に所属していたために友達の
いなかったアキラ、4人共それぞれ問題を抱えているが、互いにぶつかり合いながら、釣りを
通じて友情を深めていく過程がよく描かれている。
特にハルの空気の読めなさはぎこちない状態においてはむしろ強みとなって、突破口を
開いていく感じ。
当人同士だけではうまくいかないこともあり、そんな時は回りの大人達のやさしさが問題を
解決していく。特にユキの祖母のケイトや、船長こと歩の存在は大きかったみたいで、脇役も
いいキャラが多かった。アヒルのタピオカも可愛かったし。
ただ、男子の友情がメインだったため、ヒロインの方は今一つが影が薄かった感じ。もっと
描いてあげれば魅力が出てきたようなヒロインキャラが多かったためにちょっと勿体ない。
後半からSF的要素が強くなるが、釣りをエンターテイメントアクションにおける
エキサイティングなものとして描けたのは見事。
しかし、地球レベルの危機に発展しそうな状況なのに、皆が江ノ島音頭を踊っているという
緊張感のなさ。ある意味、この作品の作風には合っているんだけど。
途中まではイヤな人として描かれていたDUCKの上司や、人間を狂わせていた宇宙人の
ウララもそれぞれ事情があり、この作品にはいわゆる悪人という存在が皆無だった。最後まで
誰も不幸になることなく、ある意味凄く幸せな気分で終われた作品。
作画に関しては、カラフルなカラーが印象的で、1980年代に流行った鈴木 英人やわたせ
せいぞうのポップイラストを思わせる感じ。この両人は海をモチーフにした作品が多く、
そういう意味でもこの作品には合っているかな。
作品の舞台となっている江の島だが、この界隈を舞台にした作品って多いような。
「侵略!イカ娘」、「セイクリッドセブン」、「TARI TARI」なんかもそうだった。
海を始めとする自然に恵まれ、観光地ゆえに賑やかさもあり、鎌倉のような歴史ある街も
あって、横浜や東京からも近いと、ロケーションにはいいんだろうなあ。