にゃんた さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
真の絆ができたか
異文化交流モノとしてスタートした本作品を観て真っ先に浮かんだのが、
異文化交流モノの有名な映画「ダンスウィズウルブス」、「ラストサムライ」。
この2作品と軽く比較をしたい。
※上記映画のネタバレを含みますのでご注意下さい※
1 異文化との出会い
2 交流
3 失われた価値や欠けていた価値の発見
4 それまでの価値観を改め、異文化と同質化
5 かつて自分が属していた勢力との衝突
6 哀しく深い余韻の残る結末
という基本構造は同じであり、この点では虚淵氏らしい「定番はずし」は無かった(ように思われるが・・・この点については後半に記載)。
しかし、「4 異文化との同質化」の描き方が弱い。
異文化と深く同質化するからこそ、「5 かつての勢力と衝突」する主人公の選択に説得力が増すし、
その衝突のドラマ性が増すのだが、
本作品ではそこまでレドと住人達との絆が深いものだとは感じられなかった。
その原因はいくつかあると思う。
まず1つは、
住人達との関係が深化していく過程がイージー過ぎるという点。
ダンス~の「風になびく髪」然り、ラストサムライの「氏尾」然り、
主人公を警戒し、なかなか心を開かない厄介な人物が立ち塞がるからこそ、
その厄介な存在を乗り越え、認められることで、
コミュニティへの「真の仲間入り」という描写ができる。
本作品であれば、当初レドに冷徹とも取れる対応をするリジットが適任かと思いきや、
大した悶着も無いままに、あっさり水着で寝そべって一緒に焼肉パーティをする始末。
リジットにスポットを当てた中途半端な掘り下げエピソードを入れるより、
レドにスポットを当てたまま、リジットとの衝突&和解のエピソードを加えた方が良かったと思う。
また、レドはヒロインの存在だけを理由にラストバトルを戦った訳ではないのだから、
エイミーとのエピソードのみを厚くしても説得力は弱い。
ヒロインとの関係は、あくまで補助的に描くべきだと、個人的には思う。
(しかも、エイミーがレドの価値観を劇的に変化させるだけの影響を与えたかすら怪しい)
もう一つは、
ダンス~の愛馬シスコ、ラストサムライのガント軍曹のような、
いわゆる旧生活時代からの相棒を失う時期の違い。
相棒の喪失は、旧生活との繋がりが切れることを象徴するイベントであり、
その後、主人公が独りで道を切り開いていくという、ストーリーの重要な転換点だが、
本作品のチェインバーという相棒は最後まで共に生き、最後まで主人公を援護し保護し続ける。
これ自体は悪いものではないと思うが、レドが独りで新世界の住人達と深くつながっていく~
という構造にはならない。
以上のように、ガルガンティアとレド個人との絆の描き方が弱いため、
ラストバトルも含めて終盤に深い感情移入ができなかった。
ただ本作品は、ラストバトルで勝利する。
敗北の末の歴史描写に繋げる上記2作品とは大きく違う。
チェインバーという、旧生活との唯一の繋がりを失った時点で勝利し、
そこからは平穏な環境でレドが独りで異文化に同質化していくという結末に繋げる。
ここまで考えて少し思ったのは、実は、チェインバーが主人公だったのではないかと。
チェインバーも異文化と交流し、ガルガンティア住民と同質化まではしなかったが
少なからず影響を受け、ラストでは重要な意思決定をする。
人工知能がある程度の自我を持ち、自主的な判断で相棒を守る「ターミネーター2」等のパターンだったのではないか。
視聴者にダンス~、ラスト~等の映画の定番構成を想起させておいて、T2のパターンへ変化させる一種の「定番はずし」だったのかもしれない。
それが良い意味で作用したかといえば、個人的には疑問だが。
以下、2話までのレビュー
{netabare}モビルスーツのパイロットが宇宙での戦闘中に漂流してしまう。
偶然たどり着いたのは、ジブリ風のウォーターワールドな世界。
「親方!空からモビルスーツが降って来たでゲソ!」
毛色の異なるこの2者の出会いで、一体どんな化学反応が起こるのか?!
ということで、「ダンスウィズウルブス」「ラストサムライ」「アバター」
などの映画にみられるような、異文化交流モノのテンプレスタートとなった本作品。
監督の経歴をみてみたら、ジブリとサンライズという、
ある意味異文化を渡り歩いてきた人らしい。
そういう意味でも異文化交流モノとなっている本作品が
ここからどのような展開をみせてくれるのか。
脚本を担当するのが、テンプレ展開を予想させておいて裏切るあの人なだけに
かなりワクワクして視聴継続。
1クール作品ということで、内容がギュっと詰まった物語になりそうだが、
2年で幼女がグラマラス美女に急成長とか、
先を急いで終盤に雑な展開にだけはしないで欲しい。{/netabare}