入杵(イリキ) さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
終盤の展開で手に汗握る
本作は、虚淵玄がシリーズ構成・脚本を手掛け、ProductionI.Gが制作するオリジナルアニメである。
未来の地球がモデルのSF作品であり、「人としての有り方」という問いが好感。
あらすじ
宇宙(そら)から来た少年、船団都市(ガルガンティア)と出会う
遠い未来
表面のほとんどを大洋に覆われた星、地球
宇宙で育ち
戦いしか知らなかった少年兵レドは
そこで初めて海を見た
広く、淡い翠に光海
人々は巨大な船団を組み、
つつましくも生き生きと暮らしていた
通じない言葉
異なる習慣
レドは孤独な異邦人
だが、彼は一人ではなかった
ここで生きてゆくためになにができるのか
そして、なんのために生きるのか
翠の星で過ごす日々が、レドに問いかける
感想
設定自体はよくある設定なので序盤で困惑することもなく、すんなりと世界観を把握することが出来た。序盤のピニオンの心理描写などが不自然であるが、所々に張った伏線の回収や、台詞回しなどは上手くてよかった。
序盤数話と終盤数話は大変盛り上がってよかったのだが、
中盤のレドがだんだんとガルガンティアでの生活に慣れてきたあたりが、伏線を少しずつ張っていたにしても、少々中だるみ感が拭えない。
7話以降のヒディアーズに関する真相のあたりから、だんだんと面白さが蘇ってきた。
「思考する事を放棄したヒディアーズはもう人間とは呼べない」というチェインバーの論理は全く的を射ている。
「生存」を目的とした環境への最適化によって、
人間が人間である所以、すなわち思考すること、言い換えればコミュニケーションを取る事、研究をする事、自我を持つ事などを一切合切放擲している存在は人間とは呼べない。
そもそも、人間同士、例えばイラク戦争などでは将に人間と人間が殺しあって居たのであって、ヒディアーズという人間の存在意義をアルケーを放擲したイカを駆逐することに躊躇う余地など端から存在しなかったのではないかと思った。
クーゲル船団との戦いで、クーゲル中佐は「理性絶対主義」の観点から、生産能力の無い人間を社会から排除したり、宗教によって全体を統括したりと、強権政治をとる事で集団の秩序を維持していた。あれでは自由権、社会権など人間の尊厳が蔑ろにされており、レドはガルガンティアでの住民の安全で文化的な生活を見たことにより之に違和感を覚えた。
チェインバーやストライカーの例から、高度に発達したロボットには、ある種の人間に似た自我のようなものが形成されるのだろうか。ストライカーが人類の神に成ろうとしたり、チェインバーが戦友の如くレドに接した点は大変興味深い。
恐らく地球墜落からの過程でパイロットに従属しすぎて、彼らの思想が影響し若干壊れたのだろう。
本作に登場するレド少尉の搭乗するロボット
「支援啓発インターフェイス」チィンバーの最後の台詞で、
「この空と海の全てがアナタに可能性をもたらすだろう。生存せよ、探求せよ、その命に・・・・最大の成果を期待する。」は、現在の若者に対する啓発メッセージではないだろうか。
総評
SF作品としても申し分無い素晴らしい作品である。特に終盤に掛けての伏線回収と戦闘という怒涛の展開は大変見ごたえがあった。残念なのは終盤までずっと2クールだと思っていたことである。1クールでも上手く纏められているが、2クールあればより一層素晴らしい作品になったのではないか。