明日は我が身 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
閉ざされた空間で繰り広げられる群像劇
10代の少年少女が宇宙船に閉じ込められ、漂流生活をするアニメで、谷口監督お得意の「2人のキャラの対比」をしている作品。
主人公相葉こうじとその弟の相葉ゆうき。
こうじはしっかりと堅実な意見を言える優等生的な一面とことなかれ主義的な一面を持つ日本人男性まんまな性格で、信頼性の高さから周りの者にも好かれていた。
弟のゆうきははっきりと意見を言えるが攻撃的な性格なため周りからの理解は薄かった。
………ところが極限状態に置かれた時、その周りからの評価は一変する。
普通は人間は安全や安心を自分に与えてくれる人を好むのだが、この状況下ではゆうきの方がその安心に値する行動力があったのだ。
それもそのはず、相葉こうじほど平々凡々たる主人公も珍しい。成績は中くらいで、特筆されるべき技能はまったくない。腕力もゼロに等しく、弟の祐希からエキストラに至るまで、悪いことをしていないにもかかわらずあらゆる人間に殴られる。かといって負の聖徴たるトラウマなども持ち合わせない——。
つまり、昴治は主人公の特権性をはじめから与えられていないのである。エキストラがたまたま艦内の出来事を俯瞰できる位置につけられた、とでも言えばいいか驚くまでに彼は傍観者なのである。
さらにこの作品の特徴的な面は、 主要キャラのなかに過去に受けた精神的打撃を引きずっている者などもいるのに、彼らのトラウマの内実は舞台の背景程度のギリギリの少なさで描写されるか示唆されるだけである点である。
これは登場人物の描き込み不足と見るよりも物語の関心が、キャラクターたちが今まさにリヴァイアスでどういう行動をとるのかに集中しているからだと思う。この、過去よりも現在、内面より行動、心の傷より意志を重要視する作り方が、ドラマに強烈なサスペンスを付与する事を成功させたと思う。