「Another(TVアニメ動画)」

総合得点
87.5
感想・評価
5094
棚に入れた
22600
ランキング
152
★★★★☆ 3.9 (5094)
物語
4.0
作画
4.0
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.8

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ネタバレ

景禎 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ホラーをベースにしていますが、どちらかというとミステリ的要素のほうが強いです

物語はいきなりホラー的展開で始まります。1話から、しばらくはひたすら怖いのですが、この作品は単なるホラーではありません。ホラーをベースにしていますが、どちらかというとミステリ的要素のほうが強いです。

それと、やたらと人死にが出るアニメです。それも、かなり凄惨な死に方で。後に「Anotherなら死んでいた」という慣用句まで流行するほど多くの人が死にます。

登場人物がかなり多めで、初見ではなかなか覚えられません。それもそのはず、{netabare}けっこうセリフが多くて「この子、ひょっとして重要なキャラ?」と思ったも束の間、次回には死んでしまう{/netabare}なんてコトもざらにあります。これでは登場人物が多くなるのも無理はありません。

ミステリでは伏線が欠かせないですが、ご他聞にもれず、この作品も第1話には多くの伏線が張り巡らされています。{netabare}しかし、この段階では、視聴者は、見崎鳴を中心とした、いかにもホラー的に怪しそうな部分に注意を奪われてしまいます。でも、多くの伏線は釣りで、真犯人(死者)にはつながらないまま、結構早い段階で回収されてしまいます。本質的な伏線は、実はさりげなく隠されています。これらの伏線が最終的に死者(ミステリ的に言えば真犯人)が誰かを暗示しているのですが、この段階で気付ける人はほとんどいないのではないかと思います。{/netabare}

序盤で本当にだいじな伏線は以下です。(このネタバレ情報は最後まで見切った後に参照されることを強く推奨します。)
{netabare}
1. 九官鳥の名前と口癖
2. 夜見北での心構えその4
3. おじいさんの言葉
4. 美術部の活動状況
5. 美術の授業での望月君との会話
その他にもありますが、とりあえずここまで。

序盤では「見崎鳴は実は人間ではなく、幽霊か人形の精的な何かではないか?」という方向に、視聴者の関心が注がれるように仕向けられます。なので、これらの重要な伏線には気付く人はほとんどいないと思います。最後まで見切ってから、改めて最初から見返したとき、ああ、そういうことなのか・・・といふうに、伏線の存在に初めて気付くでしょう。
{/netabare}

この作品は視聴者を心地よくもてあそんでくれます。なので、最終回(つまり謎の解決)に近づいてくるにしたがって、よりいっそう次が見たくなります・・・発狂しそうなくらいに。早い話、中毒になります。

↓このネタバレ情報は最後まで見切ったあとに参照されることをお勧めします。
{netabare}
ミステリファンの方は良く知っておられると思いますが、推理小説には「叙述トリック」というものがあります。通常「トリック」というものは、物語の中の人(たとえば犯人)が物語の中の人(たとえば探偵や刑事)をだますものです。それに対して「叙述トリック」というものは、作者が読者(アニメの場合は視聴者)をだますものです。
この作品は、典型的な叙述トリックが仕掛けられます。そのトリックは前述の序盤の伏線で暗示されますが、その解決は最終話になります。
{/netabare}
↓このネタバレ情報は最後まで見切ったあとに参照されることを強く強くお勧めします。
{netabare}
この物語の真犯人、つまり「死者」は三神玲子。つまり、叙述トリックの内容は「3年3組の副担任である三神先生と、恒一の叔母(母の妹)とは同一人物であるということ。そういうことなんですが、最終回にそこへ至るまで、トリックを仕掛ける側(つまりアニメの製作者側)が、仕掛けられる側(つまり視聴者)をだまそうとする本気度が半端ないです。

三神先生と玲子さんが同一人物である、という叙述トリックをしかける場合、小説であれば問題はないのですが、アニメの場合はそう簡単ではありません。小説の場合は挿絵でもない限り外見でバレることはありませんが、アニメの場合はキャラの顔がモロに見えてしまいます。
この作品では、三神先生と玲子さんのキャラの印象をガラっと変えて、同一人物である、ということを悟られないようにしています。ヘアスタイルや服装が違うのはあたりまえ。さらに、現実には有り得ないことですが、両者、髪の毛の色まで違っています。

外見から悟られることを回避できたとしても、アニメの場合は声という問題もあります。声優が両者の声色を変えて演じれば、一応はだますことはできます。しかし、クレジットで表示される声優の名前が同じであれば、すぐにバレてしまいます。この作品への入れ込み様が尋常でない部分がそこにあります。実は、三神先生と玲子さんの声優の名前はクレジット上では(最終回をのぞいてですが)異なっています。玲子さんの声は榊原奈緒子さんですが、三上先生には宮牧美沙代という別名が用意されました。所属プロダクションのWebサイトにも、宮牧美沙代という声優が、あたかも実在するかのように、プロフィールまで用意されていたといいます。

しかし、勘の鋭い人は、宮牧美沙代という名前が、夜見山岬(現象の発端となった26年前の死者)のアナグラムであることに気付くかもしれません。アナグラムとは、「みやまきみさよ」の順序を入れ替えると「よみやまみさき」になる、ということです。
{/netabare}
音楽はOP、EDとも、雰囲気があってGoodです。とくにEDはゆったりした曲で、個人的にはかなり好きな部類です。

物語りの内容がホラー+ミステリとしておもしろいだけでなく、原作もさることながら、アニメ作品としても、ほんとによく出来ているなぁ、と感心させられ、製作者側の本気度、遊び心に敬意さえ感じさせられる、すばらしい作品です。

投稿 : 2013/06/06
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サンキュー:

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