STONE さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
理想の果てにあるもの
原作は未読。
前期は作画のクオリティの高さも印象的だったが、今回もハイレベル。
前期が未遠川でのバトルのクライマックス直前で終わったので、今期は初回から全陣営が
一堂に会する大バトル大会で、大盛り上がりの密度の濃い始まり。
この第1話が象徴するように、前期にじっくりと描いたキャラクター達が、今期では怒濤の
バトルを繰り広げるといった感じ。
更に単なるバトルだけでなく、生き残りを掛けた駆け引きも面白く、興味深かった。
ただ、こうした面白さとは裏腹に各キャラの末路は痛々しいばかりの展開。原作を
知らなくても「誰も幸福になれないだろう」と思えるようなフラグ立ちまくりで、実際
ほとんどのキャラがろくな終わりを迎えない。
こういった展開のためか、前期が割と各陣営を描いていたのに対して、今期は衛宮 切嗣の
物語といった色合いが強く、ここにきて彼の願望が初めて明らかになる。
戦場に美学を見出そうとするセイバーらを「夢見がち」とばかりに否定する切嗣だが、
切嗣の願望の方がもっと子供じみた夢を見ているように思える。
途中、切嗣の過去が描かれるが、彼の絶望が深かったゆえに、ここまで純粋な願望を抱く
ようになったのだろう。
そのために全てを犠牲にして得ようとした聖杯だが、その正体を知った時、より絶望が深く
なったのではないだろうか?。
多くの人々を救おうとして果たせなかった切嗣が一人の少年(士郎)を救うことで、心に
安堵が生まれるのはある意味皮肉なことではあるが、士郎に次を託すことでとりあえず自身の
整理は付いたのだろう。しかし、これまで失ってきたもの、捨ててきたものとその結果を見て
しまうとやはり悲しい結果かなと思えてしまう。
どう考えても納得がいっていないだろうと思われるランサー陣営や、遠坂 時臣は別に
して、己のやりたいことに忠実だったキャスター、ライダー陣営や、事実とは反するが己の
理想とする夢の中で死んだ間桐 雁夜の方が途中退場したとはいえ、まだ幸せだったのでは
なかっただろうか?。
自分の決断で聖杯を破壊した切嗣はそれなりに心の決着を付けたのだろうが、何も知らない
まま聖杯を失うことになったセイバーは、この物語では心の整理が付かないまま終わり、ある
意味一番悲惨かも。
そんなセイバーの心の決着や、ようやく自身の本質が判った言峰 綺礼の次なる行動は、
「Fate/stay night」で描かれるわけで、改めてこの作品は「Fate/stay night」前日譚
だったのだなと思い出すような引きだった。