「惡の華(TVアニメ動画)」

総合得点
65.0
感想・評価
1147
棚に入れた
4511
ランキング
3547
★★★★☆ 3.2 (1147)
物語
3.4
作画
3.0
声優
3.3
音楽
3.4
キャラ
3.2

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ネタバレ

ヒロトシ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

作りたいものを作る精神は嫌いじゃない

原作既読組。

アニメに関しては前情報を一切入れていなかったので、もう見た時は呆然。案の定キャラデザの件で、原作を完全に無視した作品として、一部では既に敵視されていたりもしますし、相当テンポが悪いというのも、マイナスに映っているようで。

{netabare}そもそも何でこんな作品になったのだろうか?勿論アニメ制作者の嫌がらせではない。それを紐解くヒントとして、原作者である押見さんとアニメ監督である長濱さんの対談がある。興味がある人は読んでみると面白いかもしれない。しかしネタバレも一部含んでいるので、原作未読の方は自己責任での閲覧をお願いしたい。読みたいけど・・・という人に向けて、このレビューでポイントとなる部分は紹介していく。尚『』部分は引用である。

http://natalie.mu/comic/pp/akunohana

この対談で鍵になるのは「ロトスコープ」
ロトスコープとは一体何なのか。
これを監督の長濱さんはこう説明している。

『簡単に言うと実写トレースですね。まず実際の人間に演技してもらって撮影して、それを1コマ1コマトレースして、アニメに起こす、という技法です。当然ですけど、人物の造形や動きがものすごく写実的に描かれるんですよ』

というのがロトスコープ。この技法は大半の人が予想していると思うが、恐ろしく手間暇かかる作業だし、何より、一番恐ろしい所は制作スケジュールを調整しづらい点にある。

『物量との戦いが一番大変なところですね。とにかく必要なカットの枚数が膨大で。しかも普通のアニメならスケジュールが切迫してくると、キャラの動きを省略してカットを減らすことができるんです。でもロトスコープはすでに実写を撮り終えているので動きを止めることができないし、あまりに写実的なので間を省略すると不自然になるんですね』

同じようなシーンが続くのは、もうしょうがない事なのだと温かい目で見てあげるしかないだろうw しかしこのロトスコープが挙げる効果は視覚的に抜群だと言わざるを得ない。例えば主人公が友人にからかわれるシーンでは、体の動きが非常に自然に表現されているし、ちょっとした仕草、例えば女の子が友人と会話する場面で、笑顔を振りまくまでの動作等はこちらがアニメである事を一瞬忘れてしまう程、リアリティが出ていたりする。こういった何気ない人の動作に注目して視聴すると、中々面白いかもしれない。

さて、映像の特徴は上記に挙げた通りだが、視聴した人で更に印象に残っているのは、やはり音響だろう。出来るだけ静かなBGMをバックとし、日常生活を表現する音源、例えば人間のガヤが、まるで自分がその場にいるかのような感覚に陥らせてくれる。そのせいで映像同様、この音響もまるでトレースしているかのような、非常にリアルな印象を受けるのだ。この辺りのカラクリは一体どうなっているのだろうか。

『違いますよ。音声さんが「そういう技法ならこの機材でどうだ」って勝手に用意してくれたんです。ガンマイクだと広い範囲の声を拾えるので、声優さん同士がほんとに話してるみたいに向き合って録音できる。そうしたら演技も普通のアニメのテンションとは違った、ロトスコープに匹敵するものになるんじゃないかと。曲もいわゆるアニメのタイアップ的じゃないものになりましたし。こうやって撮影にしろ録音にしろひとつひとつが主流と違うことをしてるので、まるでオーダーメイドのようなアニメです』

ガンマイクというのはこの前の文章で説明されているが、テレビでよく使われる長い枝がついたマイクである。そのガンマイクを使用する事で、広い範囲をカバーし、あのガヤに代表されるリアリティの演出に成功した、との事なのだろう。アニメを芸術として極限まで演出にこだわる職人ぶりは、流石長濱監督といえるかもしれない。

最後に。

第1話では日常生活を淡々と描く事に終始し、終盤で若干動きはあったものの、基本的にはテンポの悪い・つまらない印象を視聴者に与えた感じがあったと思う。前述したが、原作を改悪しているのはこうしたテンポの悪さが原因という声もある。

個人的推測だが、多分これはわざとそうしている気がする。

つまり、「つまらない日常」というものを視聴者に強く意識させておきたい狙いがあるのかもしれない。今後の展開次第ではこのつまらなさが凄く活きてくるように、わざわざそういう空気を最初からセッティングしているのかもしれない、という事である。それと「現実の日常もこんな風につまらない」というメッセージも同時に込めているのかもしれない。いずれにせよ、原作よりわざわざテンポを落としてきたのは、スケジュール的な何かではなく、これも演出の一環として考えた方が、今後この作品を楽しく視聴できるのではないかという考えを言いたい。あまりに独特な雰囲気の為、初見で受け付けない人がいても、しょうがない所はあるが、対談を読む以上、このスタッフ達は何かやってくれそうな気がする。{/netabare}

投稿 : 2013/04/07
閲覧 : 388
サンキュー:

35

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